ERATOプロジェクト

 北海道大学大学院情報科学研究科の湊真一教授が率いるERATOプロジェクトでは、アルゴリズムの研究を行っている。アルゴリズムを工夫すれば、与えられた問題を出来るだけ少ない演算回数で処理できるため、スパコンで何年もかかる問題を、パソコンを使って数時間で解くこともできる▼プロジェクトが対象としているのは、データはそれほど巨大ではないが膨大な数の場合分けが必要な計算、囲碁・将棋の勝ち負けパターンの分類や鉄道や道路の経路検索といった問題だ▼例えば、電力網のスイッチ制御を考えたとき、停電しないことや異なる変電所系統をつながない、電流が多すぎると電線が焼けるといった条件を満たす組み合わせを導くという問題がある。標準的な468個のスイッチで考えると、その組み合わせのパターンは10の140乗個もある。全てパターンを一つずつ検証するとスパコン京を使っても何年もかかるが、研究グループは数十分の計算で約10の63乗個の解があり、その中の電力損失を最小にする組み合わせも明らかにした▼ただ、2つ問題がある。一つは、電力会社等との連携ができていないため、社会実装がなかなか進まないことだ。これは研究者個人というよりも、プロジェクトマネジメントを行うJSTの問題だろう。もう一つは、様々な社会課題を数学的に解き明かすためには、それを分解・分類・解析し、どういった数学的手法が使えるかを考えなければならないが、その点を数学者個人の経験と勘に頼っていることだ▼数学は、学問分野を超えた共通言語としてイノベーション創出の結節点になり得るものだ。つなぎ手としての数学を今一度見なおして、政策的にも取り組む必要がある。