疫病

 疫病とは流行病(はやり病)のことであり、平安中期に編纂された辞書『倭名聚類抄』に”疫”という字は、「民が皆病むなり」と説明されている。感染症に比べ、重いイメージを惹起する言葉である▼昨年12月頃から西アフリカで流行し始めたエボラ出血熱は今年に入って以降感染が急速に拡大、6月頃からは猖獗を極め、いまだに深刻な事態が続いている。現代の”疫病”ともいえる恐ろしい病気である▼エボラ出血熱の病原体は、フィロウイルス科エボラウイルス属のRNAウイルスであり、大きさは80~800ナノメートル。その形状は、ヒモ型、U字型、ゼンマイ型と多種多様である。このウイルスが見つかったのは1976年のことで、初の感染者となった男性の出身地付近であるザイール(現・コンゴ民主共和国)のエボラ川にちなんで、エボラウイルスと命名された。その後もアフリカ大陸で突発的に発生・流行がみられたが、今回の大流行は感染者数、死亡者数ともに過去最高である▼エボラウイルスは、最も危険なウイルスの1つであり、そうしたウイルスを取り扱うには、特別な施設(BSL4)が必要となるが、先進国中、BSL4を稼働させていない国は日本だけである。とくに、未開の森林等に生息する野生動物から危険なウイルスが国際社会へ持ち込まれるリスクが認識されるようになってからは、BSL4施設は急速に増え、現在では40を超えている▼新たな病原体が出現するのはアフリカに限ったことではない。アジアで発生したニパウイルスもBSL4を必要とするウイルスである。わが国においても、BSL4施設稼働は焦眉の急といえよう。