27年1月1日号

 干支とは十干と十二支を組み合わせた60を周期とする数詞のことであるが、一般的には、動物が結びつけられている十二支の方を指すことが多い。平成27年の干支は「乙未」(きのとひつじ)である▼十二獣が十二支にいつ頃あてはめられたのかは定かではないらしいが、それらの動物が登場する俚諺は数多い。「羊」では、羊頭狗肉あたりが筆頭であろうが、『列子(説符)』を出典とする「多岐亡羊」、「岐路亡羊」、あるいは「亡羊の嘆」も比較的よく使われる▼中国戦国時代、羊が一匹逃げたので大勢で追いかけたが、分かれ道が多くて見失ってしまった。その話を聞いた思想家・楊朱は、学問の道もそれと同じであり、幾つにも分かれているので、真理に到達するのは難しいと嘆いたという故事に由来する。転じて、方針が多すぎてどれを選んでよいか思案にあまるとの意味でも用いられるようになった▼現在、情報の流通は恐ろしいほどの勢いで進んでおり、最先端に近いところの研究情報ですら、熱心に調べれば知ることができるようになっているが、極端に細分化された分野を網羅的に理解することなど今では誰にもできまい。また、そうした研究領域の岐路の先にはそれぞれの真理があるに違いなく、その点では楊朱のように”嘆く”こともなかろう▼とはいえ、別の路の先にある真理にまったく関心を持たなくなってしまうのは悲しむべきことである。特化した専門教育の充実は確かに大切なことであるが、その一方で、異分野融合の重要性が高まっている今日、自分とは違う路への目配りもますます重要になると思われる。