27年2月27日号

 20世紀初頭、英国でC・ドーソンによって旧石器時代の人骨が”発見された”と報告され、ピルトダウン人と命名された。当初から捏造の可能性が疑われていたが、偽造であったことが判明するまでに40年かかっている。わが国の考古学界を揺るがせた「旧石器捏造事件」が発覚したのは、2000年のことであるが、30年間にわたって”神の手”は信じられてきた。
 このような事例に対し、今世紀に入ってからは「クローン胚ES細胞株事件」(ソウル大・黄禹錫氏)、そして「STAP細胞事件」(理研・小保方晴子氏等)など、研究発表から不正が明るみに出るまでの時間は極めて短くなっている。高度情報化社会がもたらした”恩恵”の一つといえるかもしれない。
 昨今わが国における不正行為の増加は、ごく一部の研究者によるものだとはいえ、科学全体に対する社会的信頼を大きく損ねており、こうした事態を打開すべく様々な『ガイドライン』が作成されてきている。これは、成果を報告する側に要求されるものである。
 一方、ピアレビューによる研究成果の妥当性の検証は、「研究者は基本的に倫理的行動をとる」ことを前提としており、実験データの捏造や改ざん、他人の研究の盗用をチェックする機能までは果たしていない。いわば、『ガイドライン』に沿った研究成果論文であるとの仮定に立っている。ましてや当然のことながら、知の大競争時代にあって、成果優先主義など研究者を取り巻く”過酷な環境”への配慮はまったく視座に入っていない。
 人は理由なく不正行為を行うことは滅多にない。不正行為が起こる背景をよく考えてみることも大切だろう。