27年3月20日号

 最近、脳科学の研究者と懇談する機会があった。その際、”なぜ、人間だけが言葉を喋れて、他の動物が喋れないのか”という命題を理解する上で、ちょっとした手がかりを得た気がするのだ。
 まだ言葉を喋ることができない赤ちゃんが、突然、喋り出すのではなく、準備をしているという。その準備の一つが”音象徴”である。言葉の音自体と何らかのイメージ(意味)が自然と結びついて感じられるのが音象徴という現象である。例えば、赤ちゃんに尖った図形および丸みを帯びた図形を見せて、それに続けて”キピ”および”モマ”という2種類の新奇語(初めて聞く言葉)の音声を聞かせ、どちらに適合するかを観察した。大人からすれば、何となくキピは尖った図形を、モマは丸みを帯びた図形を想像するが、赤ちゃんも同じ反応を見せる。これは日本だけでなくどの国の赤ちゃんも同じだそうだ。
 それに、成人は10万程度の言葉を操るが、それを学習して、あるいは教わって覚えるのか。もし、そうだとすると、10以上の言葉を毎日覚えていかないとつじつまが合わなくなり、それは不可能なことだと気がつくはずだ。専門家も「言葉を教えられて覚える以上に勝手にどこからかわいてくるのではないか。そうでなければ覚えられるものではありません」という。音象徴を手掛かりに用いながら言葉の意味を結びつけ始める。赤ちゃんは、その行為により言語学習の第一歩を踏み出しているかも知れない。