27年10月16日号

 ノーベル生理学・医学賞を大村智・北里大学特別栄誉教授が、ノーベル物理学賞を梶田隆章・東京大学宇宙線研究所所長がそれぞれ受賞することが決まった▼様々な場所の土の中から有用な微生物やその代謝物を見つける研究というのは、今では企業も含め世界中で行われているものだが、大村氏がこの研究を始めた当時は、あまり注目されず、また明確な研究成果が出てくるまでは評価されなかった地味な研究であった。こうした先駆的な研究は科研費でもサポートすることはなかなか難しい。ピアレビューによる評価は、研究者コミュニティの中である程度認められていることが必要だからだ。そうした研究はこれまで基盤的経費(研究室に配分される経費)が支えてきたが、運営費交付金の削減が続いた結果、そうした新しい研究の芽を生み出すような地味で評価されにくい研究はできにくくなっている▼実験系の素粒子物理学などの分野では、実験装置の大型化が進んでおり、スーパーカミオカンデにも百億円以上の予算が投入されている。一方で最近の政府の動きを見ていると、SIPをはじめイノベーションに結びつくような目先の研究開発により多くの研究投資が割かれる傾向が強い。もちろん、財政赤字が膨らむ中、政府に余裕がなくなっていることも分かるが、真理の探求という人類共通の夢を実現することは非常に重要な課題である▼現在、第5期科学技術基本計画の議論が進んでいる。基礎研究・学術研究の重要性は記述されつつあるが、これまでの基本計画でもその重要性は記述されていたものの、結果として、日本の科学研究における国際競争力は低下している。今回のノーベル賞受賞を契機に、真に基礎研究・学術研究を充実させるための取り組みや具体的な環境整備目標を記述し、かつ、それを実行していくことが求められている。