28年3月11日号

イソップ童話で『アリとキリギリス』という有名な話がある。暑い日が続く夏の炎天下で、アリたちは冬に向けて一生懸命に働き、エサを巣に運ぶ▼それを横目に「なんであくせく働くの?」とばかりにキリギリスは、歌を唄いながら日々を暮らす。冬を迎えてどうなったか、その顛末は皆さんご存じのことだろう。そのアリたちの行動については、これまでの研究から、働きアリの集団の中に働かないアリが2、3割いることは分かっていたことである▼こんな働かないアリたちの存在が、実は集団全体の絶滅を防いでいることが北海道大学の研究チームの研究により突き止められた。それによると、勤勉なアリたちだけを集めた場合、確かによく働くが一斉に疲労してしまい、集団は結果として滅んでしまう。一方、働かないアリがいる集団では、よく働くアリが疲れて休むようになると、それまで働かなかったアリたちが代わって働き始めたそうだ▼キリギリス的に生きられれば天国だろうが、世の中そうは問屋がおろさない。ただ、一見、非効率的に見える働かないアリの常駐を認めることが集団の維持には欠かせないという見方を示すものとなった。さて、現代の人間の社会はどうだろう。「働かざる者食うべからず」とか「なんで働かないやつと同じ待遇なのだ」といった不平が渦巻いてしまうのではないか▼アリ的な集団行動は、人間社会の成熟度を量るバロメーターであるように思えるのだが。