28年6月3日号

オバマ大統領がアメリカの現職大統領として初めて広島を訪問し、核なき世界実現に努力する必要性を訴えた。原爆投下から71年、大きな歴史的節目となる今回の声明は、科学のあり方についても問題を提起している▼科学によって我々は海を越えて交流し、雲の上を飛び、病気を治し、宇宙を理解することができる。しかし、こうした同じ発見が、より効率的な「殺人マシン」に変わってしまうこともある。現代の戦争は、我々にこの真実を教える。広島がこの真実を伝えている。人間社会の進歩を伴わない科学技術の発展は、我々の破滅をもたらしかねない。核分裂をもたらした科学の革命は、道徳的な革命も求めている▼科学は、人間の精神の衝動の結果、生まれ、発展してきた。そして本来、精神的衝動に基づく真理の探求自体が目的である。オバマ大統領が指摘するように、その成果をどのように使っていくのかが重要であり、いまの我々に突きつけられた問題だ▼人間の学習モデルやそれをもとにしたニューラルネットワークが、人工知能(AI)を生み出した。AIはうまく活用すれば、人類の福祉や生産性の向上につながるものだが、一方でAIを搭載した兵器の開発も進められている▼分子生物学や化学の発展は我々の生活を豊かにしたが、「貧者の核兵器」といわれる生物兵器の開発を容易にしてしまった▼高い倫理観は為政者に最も強く求められるものだが、科学技術それ自体が社会を大きく変える力を持っている現代社会においては、研究者や学生にも同様の道徳観は必要であろう▼新たなものを生み出す際に、その影響を予測することは難しい。ただ、その活用がなされる時、何らかの行動を取る必要がある。