28年9月16日号

東急大岡山駅(東京都大田区)から徒歩数分の場所に、フレンチプレスコーヒーが飲めるカフェがオープンした。大岡山と言えば東京工業大学の最寄り駅で、学生向けの飲食店もあれば、閑静な住宅街のためしゃれた店も多い▼一見普通のカフェだが、ちょっと設立理念が変わっている。東工大OBであるオーナーのこだわりのコーヒーを出すという以外に、今後は研究者の研究支援も行っていきたいということだ。カフェの名前は「Salon, cafe and bar Toi Toi Toi」。カフェは昔から新たな文化の創造、文化の発信をする場所だった▼かつて研究者は、私財をなげうったり、パトロンを得たりして研究を行ってきた。それは純粋な探求心に基づく行為だった。時代は変わり、研究者の多くは、国あるいは会社からの要求に従い、研究活動をしている。イノベーションはその営みを地道に続けていけば起きるのか? このカフェでは、学術誌の創刊を検討している。掲載する論文は、基本的にどの分野からも受け付けるという▼かつて抽象画家のカンディンスキーが仲間とともに「青騎士」という名の芸術に関する総合的な年刊誌を創刊した。前衛芸術以外にも民芸品なども評価し、新たな価値観を社会に提示した。残念ながら同誌は1号のみの発行だったが、その存在は現在も多くの人々に知られている。創刊するカフェの学術誌も青騎士のように社会にインパクトを与えるものにしていきたいと発案者の同店オーナーは語る▼いまの研究現場は実にシステマチックだ。しかしながら、新たな発見は秩序から外れたところに転がっている。フレンチプレスコーヒーは表面に油が浮き、見た目はカオスだが非常にうまい。このカオティックな学術誌から新たな知の発見があることを期待したい。