29年12月15日号

大学附属病院等による医師主導治験が増加傾向をみせている。もちろん製薬企業が実施する治験と比較すれば件数は少ないが、少しずつ増加している▼医師主導治験は03年の薬事法改正により始まり、それまで製薬企業等のみが許可されていた治験を医師も行うことができるようになった。製薬企業等が採算等の理由で実施しなかった、あるいは海外では承認されているが日本国内では未承認薬の適応外使用を対象としている。例えば小児疾患や難病は患者の絶対数が少ないため該当することが多い。想像でしかないが、医師主導治験の実現は、患者を実際に身近で診て治療法開発を目指す医師にとって、患者に治癒の可能性を示せる待ち望んだ機会だったと思う▼ただ、この実施によるベネフィットが医師にさほどないことが釈然としない。大学病院等の医師の仕事は診療と研究、教育であり、奉仕の精神で医療に臨むのは倫理的には正しいだろう。しかしこれは患者の利益であって、医師の仕事はおそらく治験の実施で増加している。無償の善行は美徳とされているが、これは厚意の搾取につながりやすいことをもっと認識すべきでないか▼長時間労働による過労死や自殺の増加を受けて政府は働き方改革を進めているが、同時に担い手不足という問題も抱え、医師に関わらず担い手のハードルが高く責任が重い職業ほど絵に描いた餅になっている。医師については既に審議会が設置され、実現可能な対策が期待される。一方で我々国民にも意識改革が必要なのではないだろうか。
(29年12月15日号)