30年6月1日号

日本マイクロソフトが、AI(人工知能)の方向性と、倫理など社会的課題に対して見解を示した書籍「Future Computed:人工知能とその社会における役割」の日本語版が、同社のWebサイトから無料提供されている▼同書では、AIがもたらす仕事と雇用への影響について、3つの結論を示している。第1は、新たな雇用や経済成長は、AIというテクノロジーを取り入れる者にもたらされるもので、それを拒絶する者にもたらされるものではないということである▼第2は、AIの展開と同様に重要なのは、強力な倫理基準、法制度の改定、新スキルの教育、労働市場の改革などにより、社会とワークフォース(労働人口)を差し迫る変化に対して準備させること▼そして第3は、AIの恩恵を最大化し、好ましくない影響を最小化するために、テクノロジー企業と官民組織の共同責任による対応が必要なことだとしている▼もっともなことだと思う。科学や科学技術には、常に光と陰がつきまとう。人間がどう使うかで人類に恩恵を与えるか、不幸をもたらすか決まるのである▼例えば日常で当たり前のように使われている自動車も、交通ルールに従って使っていれば人に恩恵をもたらすことが一般的だが、ひとたび危険な運転をすれば強力な殺人の道具にもなる▼要するに問題はそれを使用する人間の側にある。その人間を決定づけるのは、学校という場だけでなく、家庭や地域、国など社会全体における教育だと思う▼簡単に言えば、お金や権力などに対する欲ばかりがはびこる不健全な社会では、人類に恩恵を与えるような科学や科学技術の使い方ができる人材の育成は難しいということだ▼AIという究極的な科学技術の台頭は、人類が人間というものを考える絶好の機会になるかもしれない。