29年2月3日号

米海洋大気局(NOAA)の調査によると、2016年の世界の平均気温は約14・8度Cで、過去最高だった前年をわずかながら上回った▼この値は、20世紀の平均(記録が残る1880年以降)よりも0・94度C高いという。しかも、過去最高の更新は、14年以降3年連続となった。この調査は、世界各地の陸上と海水面の観測データをもとに分析したもので、昨年は、太平洋東部の赤道付近の海面水温が上昇するエルニーニョ現象が影響しているとのことだ。米航空宇宙局(NASA)も独自の分析から過去最高であったことを確認している▼気になるのが、この調査をした国、アメリカの大統領にドナルド・トランプ氏が就任したことである。なぜかと言えば、大統領自身を含め、側近の閣僚たちが地球温暖化が進んでいることを信じていないというか、危機感を持っていない節があるからだ▼これからも化石燃料を増産し、エネルギー源としてふんだんに使おうとしているように見える。保護主義的な「米国第一主義」を掲げてどんどん化石燃料を消費したらどうなるのか。地球温暖化を止める政策に進めないばかりか、このままではパリ協定から「いち抜けた」と離脱を表明しないとも限らない。現在でもアメリカは世界で有数の地球温暖化ガスの放出国である。温暖化は国境に壁を築いて防げるものではない▼保護主義に走らずに、グローバルな視点で対処してほしいものだ。

29年1月27日号

今月上旬、松野博一文部科学相は訪米し、カリフォルニア大やグーグル本社などを視察、産学連携やイノベーション創出などについて、関係者と意見交換した。また、オープンイノベーション共創会議を初開催し、文科省としても本腰をいれて産学連携を進めていくようだ▼同省では平成27年度の大学等における産学連携等実施状況について公表した。今回初めて、民間企業との共同研究費受入額が450億円を超えた。研究実施件数も2万件に達している。10年から15年で研究費受入額の平均伸び率は、トップが山形大で52・7%増、2位の筑波大で35・2%増、以下は10%台の増加に留まった。研究費受入額1千万円以上の件数は増加傾向にある。特許については、大学等で保有件数が増え続けており、特許権実施等収入は26・8億円と前年より約7億円増加している。大学発ベンチャーは、設立数が多かった04年の半分以下の95件が設立された。よく海外大学と比較される寄付金の受入額は、ここ数年横ばいで、前年よりも増加はしたが約720億円だった▼民間企業と共同研究受入額を産学官連携の実務担当者数で見ていくと、1~10人の機関(232機関)では、豊橋技術科学大がトップで約2・39億円(156件)、千葉工大が約2・35億円(45件)、奈良先端科学技術大学院大が約2・13億円(108件)。50人以上の機関(10機関)では、東大がトップで50億円(1371件)、京大が44億円(964件)、阪大が34億円(896件)と続いている▼大学等の規模で産学連携の支援体制も変わってくるが、その中で着実に実績を積んでいる機関もあり、その成長要因を詳細に分析していくことがイノベーション創出等につながるだろう。

29年1月1日号

日々進歩する科学技術にとってその成果は、社会にきちんと受け入れられることでさらに成熟するものである▼原子力研究開発に関してもそれは言うまでもないことである。社会に対して「新しい原子力技術はこれです。どうですか」と提案し、社会はそれを評価する。この循環がスパイラルのように進めば、技術も社会も成熟し、発展していく。それが社会とともに進化する理想的な原子力の姿ではなかろうか▼原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の処分はどうだろう。日本では1970年代後半から地層処分の研究開発が進められ、1999年に「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ」としてその成果が示された▼その発表からからかなりの年月が経過した。また、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震をはじめ多くの自然災害が発生している。それらを受けて、現在、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会地層処分技術WG(委員長=栃山修・原子力安全研究協会技術顧問)では、第2次取りまとめを踏まえたうえで、改めて最新の科学的知見を反映した地層処分技術に関して再評価の作業を行っているところである▼再評価の成果の公表は少し遅れているようだが、大いに注目している。なぜかと言えば地層処分の問題は、我々一般の人にとっても自らが考えなければならない身近な問題でもあるからだ▼今年もこうした最新の科学技術情報を取り上げ、提供していきたい。

28年12月16日号

日本は環太平洋地震帯に位置し、地殻変動が活発で多くの地震が発生する。世界で1年間に発生する地震のうち10~20%は、日本および周辺で発生している▼それらへの対策として、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた建築基準法が存在し、日本ではこれに適合しない構造物は新たに建造することができない。これまで地震で大きな被害が出るたびに、フィードバックを受けてその内容が改正されてきた▼また日本の耐震技術や免震技術、制震技術は、その必要性から高い技術力を誇っている▼同法を適用することで価格が高くなることや、法改正以前に建造された構造物には適用されないなど別の課題はあるが、安全対策はとられている▼さて2020年に開催される東京オリンピックについては、費用が当初の予定を大幅に上回ると予想され対応が注目を集めている▼新国立競技場は価格の高騰を理由にデザインが変更されたほか、比較のためか過去のオリンピックにおけるメインスタジアムや国内のスタジアムの建設費用が報道されている▼一方で地震の発生頻度やその対策費用、人件費も異なり、さらには収容人数も異なるスタジアムとの比較が妥当かは疑問だ。必要なのはそれが導き出された理由であり、科学的研究には当然求められている論理的思考の欠如を感じる▼早くも年内最終号となりました。本年も格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。来年も編集部一同、紙面づくりに誠心誠意努力する所存です。

28年12月9日号

日本の大学や研究機関に対する企業からの研究費支出を2025年には、現在の3倍にするという政府目標を達成するためには、産学官連携機能を強化しなければならない。文科省、経産省は共同で、産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインを公表した▼日本の大学等と企業との共同研究は小規模なものが多く、約8割が300万円以下にとどまっているが、欧米の大学では1000万円以上の大規模な共同研究が多い。様々な要因があるが、その一つが日本では共同研究を実施するための基本的な体制が整備されていないことである▼企業からは、進捗管理ができておらず、いつまでにどのような成果が出るのかが曖昧なため、大型の共同研究契約を組むことが難しいという声を聞く。また研究者からは、本部からやれと言われるが、自分の研究が進まないため、あまりやりたくない。大学本部は、多くの共同研究を受け入れてもあまり実入りが多くないし、特許維持費が経営を圧迫している。様々な不満の声がある▼適切なコスト計算や共同研究を行うためのスキーム、研究者評価などの課題があり、それらがトータルシステムとして機能していないために、こうした不幸な状況が生まれてしまう▼ガイドラインは、そうした環境を整備するための考え方や具体的な事例などを示しており、適切に使えば機能強化に役立つだろう。もちろん、大学によって規模や機能が異なるため、全てを一律にはできないが、最低限満たすべき条件はあるだろう。指定国立大学ではなおさらだ。

28年12月2日号

次期米国大統領のトランプ氏は、就任後にTPPから離脱すると表明し、公平な二国間協定による貿易交渉を進める考えを明らかにした。雇用と産業を取り戻し、強いアメリカを復活させるためだという▼二国間協定といえば、日本は過去に半導体や衛星分野などで苦い経験をしてきた。この時、日本はそれらの分野で力を付け、米国市場を脅かしはじめたころである。米国はスーパー301条をちらつかせながら、日本企業によるダンピング防止を求め、日本市場の積極的開放を求めるなどした▼二国間協定となれば、自国産業を守るために、今後はどういう分野で米国が交渉に動き出すか分からない。製造業分野で新たな要求でも出てくれば、なかなか活気を取り戻せない日本のものづくり産業が、さらに厳しい状況に追い込まれないとも限らない▼例えば、いま世界的に自動運転車の開発が注目を浴びているが、日本はこの分野でも開発が進んでいる。また、ロボット産業は世界をリードする技術レベルにあり、さらなる開発が進められている▼国をあげて開発を進めた通信衛星が、政府調達コードにかけられる形となり、研究開発用を除いて日本は実用通信衛星の開発を止めることになった過去がある。トランプ氏の発言は、こうした先端技術の産業分野で今後米国が圧力を強める可能性を示唆しているのではと、不安な気持ちになる▼二国間協定は、米国が得意な交渉戦略である。取り越し苦労かもしれないが、日本はしっかりと情報収集を行い、そうなった時の準備を今から進めておく必要がある。

28年11月25日号

方の政治評論家やマスメディアなどの予想を覆して、米国の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が次期大統領に選出された▼トランプ氏といえば、選挙キャンペーン中から何かと問題発言を連発し、物議を醸した人だ。自国に関する限りにおいては高みの見物で済むのだが、日本に関わるとなるとそうはいかない。例えば、防衛問題で気になることがある。日本が核兵器を持つことを容認するような発言をしていることだ▼現段階で日米の著名な政治家や学者の間では「日本は核兵器を持つようなことはない」との認識で一致していると言っても過言ではない。そう言い切れるのには理由があって、持たないことの担保となっているのが日米原子力協定である。1953年12月に開かれた国連総会で米国のアイゼンハワー大統領は有名な演説「アトムズ・フォー・ピース」の中で、原子力平和利用を世界に呼びかけた▼資源のない日本がこれに呼応し、協定を結び、核武装しない代わりに、米国からの核燃料の調達や再処理、資機材・技術の導入などを認められている。仮に隠れて核兵器開発し、それが発覚したら協定違反となり、どんな制裁でも受けることになっている。それだけに協定の持つ意義は重い。18年7月には協定の期限切れを迎える。従来なら自動延長で済む話だが▼この発言があるだけに、日本として国防に対するきちんとした立場を明確にし、核兵器を持たない正当性を示して米国と交渉に臨むことを期待したい。

28年11月18日号

今国会は、新たな地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定、TPPなど話題に事欠かない。その中で、第190回通常国会に提出され、継続審議だった宇宙関連2法案(宇宙活動法、リモセン法)が11月9日、参議院の本会議で可決、成立した。これらは主に民間による宇宙開発・利用を促進するためのものだ▼例えば、米国ではスペースX社が幾度かの失敗をしながらも大型ロケットの打ち上げサービスを行っている。日本国内でも小型ロケット等の打ち上げは民間でという流れがある。これまで限られた組織でしかできなかったロケットの打ち上げにベンチャー企業が参入できるよう法整備したのだ。今年度中に政府が取りまとめる「宇宙産業ビジョン」の下、宇宙産業全体の底上げを図る▼ここ最近の一番の話題は、やはり米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が決まったことだろう。サイエンス・ディベートによるアンケートでは同氏の回答の中に、宇宙についてのキーワードが何度か登場する。他の科学技術分野に対する回答の希薄さからすれば注目すべきだが、実際は予想がつかない。日本の宇宙科学・宇宙開発は、国際協調で進めるという考えだが、特別な関係にある米国の政策に引きずられる可能性もある▼米国のように民間による宇宙関連サービスの拡大が、様々なイノベーションをもたらす可能性がある。これまで考えられなかった新しい「宇宙の使い道」が見いだされるかもしれない。大きな世界的変化の中で、政府は宇宙産業をどのようなストラテジーをもって推し進めていくのか、今後の展開に期待したい。