29年6月2日号

膵臓ってどんな臓器なのか。食物の消化を助ける膵液やインスリンなどのホルモンを生産している臓器だということくらいはご存じの方も多いことだろう▼では、どんな形をしていて、体のどこにあるのかというと筆者を含めてだがあやふやになってくるのではないだろうか。まず位置だが、胃と背骨の間に目立たないように収まっている。形といえばピーマンに似ていて、膵頭部(ヘタの部分)は十二指腸に囲まれており、膵尾部は脾臓と結ばれている▼ところで膵臓といえば、いま膵臓ガンが増え続けている。問題は死亡者数で、厚生労働省のデータによると2001年に男性約1万人、女性約8千9百人だったものが、15年には約1万6千人、1万5千人となり、現在、新規患者数でも死亡者数でも肝臓ガンを抜いて4位となった▼目立たない臓器だけに発見が難しく、見つかった時には手術ができないような状態になっていることが多い。専門家も「膵臓は大動脈に接しているだけに、そこに浸潤している場合手術はできないし、可能でも大手術になってしまう。お腹のエコーによりしっかり診ていくことが早期発見につながります」と指摘する▼ただ増加の要因は、高齢化によるところが大きく、患者数が増えてくるのは50代からで、男性の場合70代でピークとなる。膵臓ガンの腫瘍マーカーは血液検査で簡単に調べることができるとか。糖尿病との関連もあるようで、日頃から健診等できちんとチェックすることが最善の策のようだ。

29年3月10日号

電波の最大出力が大きくて、医療機器に与える影響が生じやすい第2世代携帯電話サービスが平成24年7月に終了したことなどを踏まえ、平成26年8月に、医療分野における携帯電話等の使用に関する指針が改訂された▼これによって、それまで使用が原則禁止されていた病院などの医療機関でも、携帯電話使用が原則認められることとなり、院内における携帯電話使用が可能になった病院は急増した▼総務省によれば、全面利用不可の病院は平成17年には51・6%もあったが、平成27年ではわずか4・3%に減少。全面利用可26・4%と一部利用可69・2%を合わせ、95・7%の病院内で携帯電話が使えるようになった▼ところが利用が促進され、トラブルも増加した。総務省のアンケート調査結果では、4分の1の病院でトラブルが発生している。改訂指針で定めている、一般向けと医療従事者者向けの利用ルールの理解不足や、医療機器に対して定められた電磁的耐性の規制(薬事法)への対策が不十分なことなどが理由だ▼そこで、指針を策定している電波環境協議会が「医療機関において安心・安全に電波を利用するための手引き」を平成28年8月に作成し、関係機関などへ周知した。今後は、さらに手引きの周知徹底をはかり、手引き内容の拡充やオンライン講習など周知方策の検討も進めていく▼ところで、電波利用の普及促進と安心・安全は相対立するものではなく、ルールを守り定められた対策を講じていれば、トラブルはそれほど生じないはずだ▼運転中の携帯電話利用は道交法で禁止となったが、使用は後を絶たずに死亡事故も起きている。問題は使う人間側にある。指針やルールづくりだけでなく、病院現場での監視や指導など、より実質的な対策も必要なのではないか。

29年3月3日号

「暦の上だけではなく本当の春も間近」。3月となると暖かい季節の足音が身近に感ぜられ、何となくウキウキした気分になる▼ただ「冗談じゃない。これからが憂鬱な時期なのだ」と気分が落ち込んでしまう人が、最近のデータによると日本人の4人に1人の割合でいるという。花粉症に悩む人のことだ。そもそも花粉症とは、その名の通り植物の花粉が原因で起こるアレルギー疾患のこと。アレルゲン(抗原)である花粉が目や鼻から入ると、リンパ球が抗原を異物と認識して抗体をつくる▼そこで抗体が肥満細胞にくっつき、再び抗原が入ってくると、肥満細胞からヒスタミンなどの化学物質を出し、それがくしゃみ、鼻水、かゆみなどのアレルギー症状を起こす。花粉の代表格なのがスギで、2月から6月くらいにかけ猛威をふるう。ヒノキ科も時期が重なる。イネ科となると4月から9月の秋、ブタクサ(キク科)は8月から10月だ。北海道にはブタクサによる被害はないものの、ほぼ日本全国で注意しなければならない▼被害を最小限にするには、外出を控えることなのだが、実際はそうもいかない。第一室内にいてもかかってしまう。アレルギー症状は、体調が崩れた時ほど悪化しやすいだけに専門家も「十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動と日頃の健康管理も結構大切です」と指摘する▼花粉症を和らげるには、事前に飛散情報をチェックし、症状が出ても出なくとも早めに医師や薬剤師に受診し、自己防衛するしか手はなさそうだ。

29年2月10日号

よく自由には責任が伴うと言われる。換言すればどんな社会にも、法律や慣習などに基づいた規範があって、その規範に違反した行為をすると責任を取らされるということである。これは、学術研究の世界でも同じである。自由に研究することは認められているが、やはりこの世界の規範に違反すれば、責任を取らなければならない▼先日、e-ラーニング教材の利用普及により研究倫理教育を展開してきた、文科省事業「CITI Japanプロジェクト」の事業継承式典と最終報告会が行われた。同プロジェクトが今年度末で終了することになり、その事業を一般財団法人公正研究推進協会に事業継承することになったからである▼その式典で、同協会の吉川弘之会長が「科学者や研究者には、研究課題や研究方法を自由に決めたり、仮説を立て、その仮説の下で行動したり公的に発表したりできるなど、一般社会人にはない大きな自由が与えられている。科学者や研究者は、そのことを深く考える必要がある」とあいさつの中で語った▼そして、そういう大きな自由が与えられていることの帰結として、不正は許されないことなのだという考えを示した。その通りだと思う。つまり、研究の自由ということには責任が伴うということだ。だから、しっかりとこの世界の規範を身に着ける必要がある▼そのためには、研究活動をしていく中で規範を身に着けていけばいいというだけでなく、きちっとした教育プログラムに沿って研究倫理を学ぶ、あるいは教育するということも重要である。ぜひe-ラーニング教材を使った研究倫理教育が普及するよう、今後の同協会の活動に注目したい。

29年2月3日号

米海洋大気局(NOAA)の調査によると、2016年の世界の平均気温は約14・8度Cで、過去最高だった前年をわずかながら上回った▼この値は、20世紀の平均(記録が残る1880年以降)よりも0・94度C高いという。しかも、過去最高の更新は、14年以降3年連続となった。この調査は、世界各地の陸上と海水面の観測データをもとに分析したもので、昨年は、太平洋東部の赤道付近の海面水温が上昇するエルニーニョ現象が影響しているとのことだ。米航空宇宙局(NASA)も独自の分析から過去最高であったことを確認している▼気になるのが、この調査をした国、アメリカの大統領にドナルド・トランプ氏が就任したことである。なぜかと言えば、大統領自身を含め、側近の閣僚たちが地球温暖化が進んでいることを信じていないというか、危機感を持っていない節があるからだ▼これからも化石燃料を増産し、エネルギー源としてふんだんに使おうとしているように見える。保護主義的な「米国第一主義」を掲げてどんどん化石燃料を消費したらどうなるのか。地球温暖化を止める政策に進めないばかりか、このままではパリ協定から「いち抜けた」と離脱を表明しないとも限らない。現在でもアメリカは世界で有数の地球温暖化ガスの放出国である。温暖化は国境に壁を築いて防げるものではない▼保護主義に走らずに、グローバルな視点で対処してほしいものだ。

29年1月27日号

今月上旬、松野博一文部科学相は訪米し、カリフォルニア大やグーグル本社などを視察、産学連携やイノベーション創出などについて、関係者と意見交換した。また、オープンイノベーション共創会議を初開催し、文科省としても本腰をいれて産学連携を進めていくようだ▼同省では平成27年度の大学等における産学連携等実施状況について公表した。今回初めて、民間企業との共同研究費受入額が450億円を超えた。研究実施件数も2万件に達している。10年から15年で研究費受入額の平均伸び率は、トップが山形大で52・7%増、2位の筑波大で35・2%増、以下は10%台の増加に留まった。研究費受入額1千万円以上の件数は増加傾向にある。特許については、大学等で保有件数が増え続けており、特許権実施等収入は26・8億円と前年より約7億円増加している。大学発ベンチャーは、設立数が多かった04年の半分以下の95件が設立された。よく海外大学と比較される寄付金の受入額は、ここ数年横ばいで、前年よりも増加はしたが約720億円だった▼民間企業と共同研究受入額を産学官連携の実務担当者数で見ていくと、1~10人の機関(232機関)では、豊橋技術科学大がトップで約2・39億円(156件)、千葉工大が約2・35億円(45件)、奈良先端科学技術大学院大が約2・13億円(108件)。50人以上の機関(10機関)では、東大がトップで50億円(1371件)、京大が44億円(964件)、阪大が34億円(896件)と続いている▼大学等の規模で産学連携の支援体制も変わってくるが、その中で着実に実績を積んでいる機関もあり、その成長要因を詳細に分析していくことがイノベーション創出等につながるだろう。

29年1月1日号

日々進歩する科学技術にとってその成果は、社会にきちんと受け入れられることでさらに成熟するものである▼原子力研究開発に関してもそれは言うまでもないことである。社会に対して「新しい原子力技術はこれです。どうですか」と提案し、社会はそれを評価する。この循環がスパイラルのように進めば、技術も社会も成熟し、発展していく。それが社会とともに進化する理想的な原子力の姿ではなかろうか▼原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の処分はどうだろう。日本では1970年代後半から地層処分の研究開発が進められ、1999年に「わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次取りまとめ」としてその成果が示された▼その発表からからかなりの年月が経過した。また、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震をはじめ多くの自然災害が発生している。それらを受けて、現在、総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会原子力小委員会地層処分技術WG(委員長=栃山修・原子力安全研究協会技術顧問)では、第2次取りまとめを踏まえたうえで、改めて最新の科学的知見を反映した地層処分技術に関して再評価の作業を行っているところである▼再評価の成果の公表は少し遅れているようだが、大いに注目している。なぜかと言えば地層処分の問題は、我々一般の人にとっても自らが考えなければならない身近な問題でもあるからだ▼今年もこうした最新の科学技術情報を取り上げ、提供していきたい。

28年12月16日号

日本は環太平洋地震帯に位置し、地殻変動が活発で多くの地震が発生する。世界で1年間に発生する地震のうち10~20%は、日本および周辺で発生している▼それらへの対策として、国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めた建築基準法が存在し、日本ではこれに適合しない構造物は新たに建造することができない。これまで地震で大きな被害が出るたびに、フィードバックを受けてその内容が改正されてきた▼また日本の耐震技術や免震技術、制震技術は、その必要性から高い技術力を誇っている▼同法を適用することで価格が高くなることや、法改正以前に建造された構造物には適用されないなど別の課題はあるが、安全対策はとられている▼さて2020年に開催される東京オリンピックについては、費用が当初の予定を大幅に上回ると予想され対応が注目を集めている▼新国立競技場は価格の高騰を理由にデザインが変更されたほか、比較のためか過去のオリンピックにおけるメインスタジアムや国内のスタジアムの建設費用が報道されている▼一方で地震の発生頻度やその対策費用、人件費も異なり、さらには収容人数も異なるスタジアムとの比較が妥当かは疑問だ。必要なのはそれが導き出された理由であり、科学的研究には当然求められている論理的思考の欠如を感じる▼早くも年内最終号となりました。本年も格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます。来年も編集部一同、紙面づくりに誠心誠意努力する所存です。