30年7月13日号

サッカーロシアW杯で、FIFAランク61位の日本が格上のチームに勇敢に挑んだ姿は見ていて胸が熱くなった。優勝候補のベルギーに負けはしたが、国民にベスト8進出の夢を見せてくれた▼スポーツイベントは今月も続き7日に欧州の自転車レース「ツール・ド・フランス」が開幕した。105回目のレース開幕直前には、4連覇を狙うクリス・フルーム選手が禁止薬物(喘息治療薬)の過剰摂取問題で主催者が出場拒否したという報道が流れ、ファンをヤキモキさせたが結局、フルーム選手は無事参加となった▼観戦だけでは物足りず、あるいは健康ブームで、中高年を中心にスポーツ自転車に乗り始める人が増えている。日本の自転車保有台数は7155万台(2013年度)。増加傾向にあり、これは30年前の約2倍だ。欧州での流行を受けて各メーカーがスポーツタイプの電動アシスト自転車(E-BIKE)を発売したことも後押ししている。政府も先月、環境負荷低減や健康増進を目指した自転車活用推進計画を閣議決定。東京五輪までにシェアサイクルの専用駐輪場を1700カ所に倍増させ、自動車通勤率を向上させるための検討を始めた▼一方で自転車は乗り方を間違えると大きな事故につながる。ながら運転をしていた女子大生がお年寄りを死なせてしまった事故があった。交通事故の全体数は減っているが、自転車と歩行者の事故は02年から10年間で1・3倍に増加。自転車専用レーンはあるが、そこに自動車がとまっていたりアンバランスな状態だ▼欧州では幅広の自転車専用レーンが多く整備され、子供を安全に乗せるカーゴ付き自転車も普及している。自転車は最もエネルギー効率が高い移動手段と言われている。地球のためにも安全を前提に乗りこなしたいものだ。ついでに体重も落としたい。

30年7月6日号

国立大学における人事給与マネジメント改革は、骨太方針、未来投資戦略、統合イノベーション戦略それぞれで重要施策に位置づけられているが、先日の国立大学協会の総会では、厳しい反対意見が多く見受けられた。個別の大学ごとに様々な事情を抱えているにも関わらず、一律のシステムを導入することに対する反発と、これまで運営費交付金が削減され続けたことによる政府に対する不信感があるためだ▼科学技術・学術政策研究所の意識調査では、運営費交付金の減少に伴い、昇進や採用等の人事が凍結されているとの指摘が見られ、一方、財務諸表の調査からは、運営費交付金で賄われている人件費の割合は8~9割しかないことが明らかになっている。特徴的なのは、いわゆる研究大学では人件費は増えているが教員数も増えているため、一人あたりの人件費は低下し、地方大学では教員数・人件費ともに減少している。また研究に必須となっている科研費については、教員一人あたりの金額(直接経費)を決算ベースで見てみると、トップ大学は減少し、それ以外の大学では減少あるい横ばいとなっている▼民間であれ公的研究機関であれ、組織を活性化するためにはヒト・モノ・カネが必要だが、国立大学、特に小規模地方大学にはこれらの要素が決定的に不足している。これでは改革しようにも効果的な取り組みが実施できない▼これまでの文科省の補助金は、各改革項目ごとに各大学でプランを策定し、それを評価した上で予算を配分していた。そのため会議や書類作成に時間を取られ、研究や教育に十分なエネルギーを配分できず、その結果、負のスパイラルに陥ってしまっていた。資源が足りない上、そんな無駄をしていたら活性化するはずがない。せめて機関配分補助金等は一元化するなどの改革を実施すべきだ。

30年6月29日号

6月18日の朝に大阪北部を襲った強い地震で被災者が出て、5人の尊い命が奪われた。謹んでお見舞い申し上げ、ご冥福をお祈りします▼この地震を含めて、最近大きな地震が多い気がして調べてみたら、震度5以上の地震が今年に入って日本では既に7回発生している▼大阪北部の前に、群馬南部(6月17日)、長野県北部(5月25日)、同(5月12日)、根室半島南東沖(4月14日)、島根県西部(4月9日)、西表島付近(3月1日)で起きている▼地震をはじめ、台風や火山など、日本は自然災害の多い災害多発国である。先日、第1回「防災に関する日本学術会議・学協会・府省庁の連絡会」が開かれるというので取材した(本紙6月15日号に既報)▼防災・減災・災害復興のためには、地震や津波、火山、気象、工学、救急医療、都市計画、地理、経済、情報、エネルギー、歴史、行政など、多くの分野が関係している▼そこで一層の防災・減災・災害復興のために、学術界と行政機関のさらなる連携強化が必要と考え、この連絡会が開催された。主催の日本学術会議は防災学術連携体を設立し、熊本地震災害や火山噴火、豪雨災害などに対応して、情報発信強化や学会間の情報共有などにも努力している▼予想の難しい自然災害に対し、平常時から、あらゆる対策をとることは費用や技術などの面から難しいだろう。しかし、より強固な対策を講じていれば、被災の程度を少なくすることは可能である▼つまり、減災という考え方である。災害多発国の日本で、どうすれば減災できるのか、真剣に考える時期が来ているのはないか。それには、学界という知の集団の活躍が期待される▼今後も、連絡会実施を重ね、学界の優れた知恵を防災行政に反映させて、より強固な防災・減災対策が実現されるよう望みたい。

30年6月22日号

昨今、健康志向も手伝ってか、関連の器具やサプリメントなどがテレビなどのマスコミでひっきりなしに紹介されている▼そのような手段を利用しなくとも手っ取り早い健康法として昔から言われているのが「歩くこと」、歩行である。ただ、その効用に対する科学的根拠となると、過去にも研究論文が報告されてはいるのだが、信憑性は必ずしも高くない。その理由としては、自己申告に基づくデータが多いからだそうだ▼ところが最近、歩行頻度と健康への影響をとりまとめた新たな研究論文が発表されている。それによると、71歳の日本人高齢者419人を対象に、歩数計を利用し、7日間連続で歩数を測定、1日平均で4503歩未満から7972歩以上までを4つの集団に分け、死亡リスクを比較検討している▼平均約10年間追跡調査をしたところ、4503歩未満の集団と比較して、7972歩以上の集団では、死亡リスクが54%ほど低下したという。この値が統計学的にも有意であることが明らかなのは言うまでもない▼では、どんどん歩数を増やしていけばよいのだろうか。この論文では残念ながら、一定歩数を超えた後の歩数の増加と死亡リスクとの相関関係は示されていない。よく1日に1万歩は歩きなさいと言われるが、それだけ歩くことができれば健康であることに違いはない。やはり歩くことは健康維持には欠かせないことが示された▼これから暑い日々が続く季節。できるだけクーラーの効いた部屋に閉じこもるのではなく、朝夕の涼しい時間帯を見つけては歩くことをお勧めしたい。

30年6月15日号

梅雨の字にある梅は花ではなく実のことなのだ。梅の木を見て実感を持ってそれが理解できたこのごろだが…▼気象庁によれば今年の東京を含む関東甲信地方の梅雨入りは6月6日ごろ(速報値)で平年より2日はやかった。梅雨明けも昨年の例では7月6日ごろで平年より15日もはやくやって来た。また昨年は梅雨の時期の降水量が少ない地方が多く、国管理河川の1割強の12水系14河川で取水制限が行われる渇水が発生した。国土交通省や地方自治体などが節水を呼びかける広報を様々な場所で展開したので覚えている人も多いのではないだろうか▼先日、観光で訪れた海外某所では、例年は激しいスコールがあるそうだが今年は雨が降らず、観光客には喜ばれるが、このままだと農作物が壊滅的な打撃を受けると聞いた。一般家庭では夜間の断水が行われているという▼近年、日本では気候変動の影響で降水量の変動幅が拡大し、毎年のように渇水、あるいは洪水が起きている。渇水は農業だけでなく、水を大量に必要とする製造業にも大きく影響する。また地盤沈下という間接的な問題も引き起こし、平成6年に起きた過去最大の渇水では、42都道府県の1666人に影響があった▼政府はインフラ整備を進めているが、最終的に必要なのは我々ひとりひとりの節水だ。ぜひ地方自治体や省庁のWebサイトを参考にしてほしい。国土交通省のサイトには、全国のダム貯水情報もある▼水資源の貴重さなどに対する理解や関心を深めるため、政府は毎年8月1日を「水の日」、またこの日から1週間を「水の週間」としている。今年こそ雨水などの二次利用水をつかった打ち水に参加したい。

30年6月8日号

従来の科学技術政策だけでは日本の国際競争力の劣化を食い止めることはできない。政府が一体となって経済社会システム全体を大胆に変革する必要がある。そこで、幅広く科学技術イノベーションに関連する政策や経済社会システムを検証し、PDCAのアクション(改善)として実行する統合イノベーション戦略を策定する。全体で80ページにもなる戦略の素案は「はじめに」の部分で、このように自らを位置づけている▼素案の中に経済社会システム改革はどのくらい入っているのだろうか。例えば、研究開発の成果を社会実装していくための創業支援の強化では、技術・イノベーションの進展に合わせた規制・法制度の見直しということで、サンドボックス制度の活用、横断的・オープン・柔軟な規制の見直し、国家戦略特区の活用などをあげている。政府事業のイノベーション化では、国土交通省のi-Construction、厚生労働省の条件付き早期承認制度などを取り上げた上で、各省庁の事業・制度等の見直しについて、CSTIが提案を行っていくという。重点分野別の取り組みにも幾つかの記述がある▼ところでSIPは、科学技術イノベーション創造推進費で行われているが、この経費は予算制度上、何に使っても良いことになっている。そのため550億円の予算のうち、175億円が毎年、医療分野の研究開発に関する調整費としてAMEDに配分されている。これまでは毎年残り375億円がSIP事業に配分されてきた▼システム改革はやってみないと正解かどうかわからない側面がある。SIP事業実用化のための改革も重要だが、より幅広く日本の経済社会システムの改革を行うのであれば、この予算を使ったある種の社会実験を行うことが有効だ。同時に各省バラバラの予算使用ルール統一も必要であろう。

30年6月1日号

日本マイクロソフトが、AI(人工知能)の方向性と、倫理など社会的課題に対して見解を示した書籍「Future Computed:人工知能とその社会における役割」の日本語版が、同社のWebサイトから無料提供されている▼同書では、AIがもたらす仕事と雇用への影響について、3つの結論を示している。第1は、新たな雇用や経済成長は、AIというテクノロジーを取り入れる者にもたらされるもので、それを拒絶する者にもたらされるものではないということである▼第2は、AIの展開と同様に重要なのは、強力な倫理基準、法制度の改定、新スキルの教育、労働市場の改革などにより、社会とワークフォース(労働人口)を差し迫る変化に対して準備させること▼そして第3は、AIの恩恵を最大化し、好ましくない影響を最小化するために、テクノロジー企業と官民組織の共同責任による対応が必要なことだとしている▼もっともなことだと思う。科学や科学技術には、常に光と陰がつきまとう。人間がどう使うかで人類に恩恵を与えるか、不幸をもたらすか決まるのである▼例えば日常で当たり前のように使われている自動車も、交通ルールに従って使っていれば人に恩恵をもたらすことが一般的だが、ひとたび危険な運転をすれば強力な殺人の道具にもなる▼要するに問題はそれを使用する人間の側にある。その人間を決定づけるのは、学校という場だけでなく、家庭や地域、国など社会全体における教育だと思う▼簡単に言えば、お金や権力などに対する欲ばかりがはびこる不健全な社会では、人類に恩恵を与えるような科学や科学技術の使い方ができる人材の育成は難しいということだ▼AIという究極的な科学技術の台頭は、人類が人間というものを考える絶好の機会になるかもしれない。

30年5月25日号

新緑の季節がきた。この時期になると人間はだんだん行動的になってくるが、準備不足のままだと思わぬ落とし穴が待っていることがある▼警察庁発表のデータによると、昨年夏期(7月から8月)の日本の山岳遭難発生件数が611件だというのだ。この数自体、多いように思える。実際ここ数年、多少の増減はあるが600件を超えてしまっている。遭難の理由としては、「道に迷ってしまうこと」が約27%とトップで、「転倒」約24%、「滑落」15%と続く。少し意外だったのが「病気によるもの」で滑落と同程度の約14%にも及ぶ▼自分では元気だと思って登っているうちに心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化症による血管疾患に見舞われやすくなるためだ。常に言われていることだが、そこにはやはり油断が見え隠れする。たいした高さの山ではないのだからとハイキング感覚で登ってしまい、取り返しがつかないことになる。後で悔やまないためにも、気圧や気温が平地とは違うことを知っておくべきだ▼蒸し暑い下界から数時間をかけ、しかも低酸素状態の中、アップダウンのある道を歩くだけでも心臓への負担はかなりのものとなる。それに加えて汗をかき、呼吸による水分の問題も加わる。専門の医師も「慢心は禁物です。温度にしても下界に比べて3度C程度違うはずで、寒暖の差が心臓に負担をかけます。厚手の衣服を用意するのは当たり前です。それに脱水には特に気をつけるべきです」と指摘する▼冬山登山のように本格的なものとなれば事前の心構えはおのずと異なるものだが、この時期はどうしても解放感も手伝い、ついつい注意がおろそかになってしまいがちである。富士山をサンダル履きで登ろうとした人は論外にしても、事前にきちんと計画を立て、装備を整えるといった意識を定着させるべきだ。