有機結晶中の伝導電荷 多彩な振動を「重ね着」

 分子科学研究所、千葉大学を中心とする研究グループは、高輝度シンクロトロン放射光施設UVSORを利用した世界最高水準のエネルギーと波数分解能を持つ角度分解紫外光電子分光実験を実施。有機半導体の電荷(電子・ホール)が結晶に広がる集団的な格子振動と、局所的な分子振動から受ける多重の量子効果を初めて観測することに成功した。
 有機分子の特徴を利用し、これまでの材料では実現できなかった次世代モノづくりが始まっている。とは言っても、特に有機半導体は、70年ほど前に発見されて以来、研究が続けられてきているが、実験的な難しさから、電気伝導特性の本質はまだ完全に理解されていない。
(29年9月8日号)

重要科学技術史資料の平成29年度登録15件を決定

 国立科学博物館は、重要科学技術史資料(未来技術遺産)の平成29年度登録15件を決定した。登録証授与式は9月12日に同館で行う。
 科学技術の発達史上重要な成果で、次世代に継承していく上で重要な意義を持つ科学技術資料であり、国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えた科学技術史資料の保存と活用を図ることを目的としている登録制度。登録後は、同館が定期的に資料の状況を確認するなどアフターケアをする。
(29年9月8日号)

100kW規模の海流発電の実証試験を完了

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と㈱IHIは、今夏8月に鹿児島県口之島沖で、100kW規模の海流発電としては世界初となる、水中浮遊式海流発電システムの実証試験を完了した。NEDOは新しい再生可能エネルギー源として期待しており、特に離島などでの実用化を目指している。IHIは、今回の実証試験により得られたデータを今後の研究開発に活用し、海流エネルギーを有効かつ経済的に利用する水中浮遊式海流発電システムについて、2020年以降の実用化を目指す。
(29年9月8日号)

概算要求 科学技術は7745億円増の4兆2613億円

 2018年度予算概算要求の科学技術関係予算総額(暫定値)が、今年度予算比7745億円増の4兆2613億円となることがわかった。このうち要望額(新しい日本のための優先課題推進枠)は7658億円。また科学技術振興費は1兆5072億円(2027億円増)となった。総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)では、18年度から毎年3000億円の科学技術関係予算の増額を目指しており、そのため既存事業を科学技術関係予算に転換する科学技術イノベーション転換事業を進めているが、今回は10府省から総額1500~2000億円規模の登録があった。認められると科学技術関係予算がさらに増えることになる。
(29年9月8日号)

ビタミン関連物質の溶解メカニズム解明

 理化学研究所産業連携本部イノベーション推進センター中村特別研究室の中村振一郎特別招聘研究員、三菱ガス化学の池本一人主席研究員、立教大学の松下信之教授らの共同研究グループは、ビタミンに深く関連する物質「ピロロキノリンキノン二ナトリウム(Na2PQQ)」の結晶の特徴的な溶解メカニズムの解明に成功した。
 栄養学的な知見からビタミンの候補として考えられてきたピロロキノリンキノン(PQQ)は1979年に発見され、2003年には理研の研究チームが新しいビタミンとして機能していることを解明し注目を集めた。その後、Na2PQQがサプリメントとして商品化されたが、体内でどう溶解するのか、その詳細さことは分かっていなかった。しかも、産業界の苦難を如実に反映したできごとがあった。中村特別招聘研究員によると「三菱ガス化学がPQQジナトリウムというサプリメント原料の販売をしていますが、『胃の中に入れば同じ』とばかりに粗悪品が出現し、その対応に苦慮していました」という。
(29年9月8日号)

幻の流星群を観測

 総合研究大学院大学の藤原康德さん(大学院生)、国立極地研究所の中村卓司教授、かわさき宙と緑の科学館の佐藤幹哉さん、国立天文台の渡部潤一教授らの研究グループは、2014年に再出現した幻の流星群を観測し、その親天体の活動度などを明らかにした。
 観測対象にしたのは、1956年に第1次南極地域観測隊がインド洋上で発見した流星群『ほうおう座流星群』。この観測以降、同流星群は、ほとんど出現していないため幻と呼ばれていた。
 太陽を回るのは地球などの惑星以外に、小惑星や太陽に近づくと自らの物質を放出して広がる彗星がある。当初は彗星としてダストやガスを放出していたものが小惑星になることもある。彗星は太陽から遠くなると観測できなくなる。
 流星群は、親天体(ほぼ彗星)から放出された流星体の帯(ダスト・トレイル)が、地球の大気に突入することで観測される。流星体は、親天体とほぼ同じ軌道で運動し、ゆっくりと親天体から離れ、ダスト・トレイルとなる。近年、このダスト・トレイル理論が高度化し、その流星体が親天体から、いつ、どのような速度、方向に放出されたか等がシミュレーションできるようになった。その結果、流星群の出現状況を再現し、正確に予報できるようになった。
(29年9月8日号)

リチウムイオン二次電池の組成変化を解明

群馬大学理工学部の鈴木宏輔助教、鈴木操士氏、石川泰己氏、櫻井浩教授の研究グループは、高輝度光科学研究センターの伊藤真義副主幹研究員、櫻井吉晴主席研究員、トヨタ自動車の山重寿夫博士、立命館大学の折笠有基准教授、京都大学の内本喜晴教授と共同で、大型放射光施設SPring‐8の高輝度・高エネルギーの放射光X線を用いて、動作下にある市販のリチウムイオン二次電池から、リチウムイオン濃度分布を測定し、同時に正・負極内のリチウム組成変化を明らかにすることに成功した。
 リチウムイオン二次電池の特性向上に関する課題の一つに、電極内におけるリチウムの反応分布がある。鈴木宏輔助教によると「この詳細を明らかにするためには、非破壊で電池内部の反応分布を可視化し、反応に寄与するリチウムを定量することが重要であり、研究を進めました」という。
(29年9月8日号)

データ関連人材育成プログラムの取組機関選定

 文部科学省は、データ関連人材育成プログラムの取組機関として、4機関を選定した。第4次産業革命を勝ち抜く上で求められる、AI、IoT、ビッグデータ、セキュリティ等のデータ関連技術を駆使する人材を、発掘・育成・活躍促進を一貫して行う企業や大学等の取り組みを支援するもの。具体的には、研究活動を通じて高度なデータの扱いに親しんだ博士課程学生や博士号取得者等を対象に、企業や大学等が人材の発掘・育成・活躍促進を目的としたコンソーシアムを形成し、インターンシップやPBL(課題解決型学習)等の実践的な研修プログラムを開発・実施する。今年度予算は2億1300万円。
(29年9月1日号)