「秋の褒章」自然科学系の紫綬受章者業績

 政府は、秋の褒章を発表した。文部科学省関係では、紫綬褒章18人、藍綬褒章3人、黄綬褒章11人、緑綬褒章2人が選ばれた。紫綬褒章のうち学術分野は9人。伝達式は14日、文部科学省講堂で行われる。学術(自然科学系の8人)の紫綬褒章受章者は次の通り。

 ◇西田友是(68歳)東京大学名誉教授=コンピューターグラフィックスの分野で、パイオニアとして陰影計算、光の相互反射、光の多重散乱などの基礎的な計算技法を確立し、自然科学を支える可視化技術が映像産業など様々な分野に影響をもたらすなど、斯界の発展に貢献した。

 ◇津田敏隆(65歳)京都大学名誉教授=大気物理学の分野で、各種の計測装置を用いた国内外での先駆的な観測により、大気波動による大気大循環についての多大な研究成果をあげるとともに、GPS電波掩蔽データを用いて大気重力波および電離層擾乱の全球分布を世界で初めて明らかにするなど、斯界の発展に多大な貢献をした。

 ◇川合眞紀(65歳)自然科学研究機構分子科学研究所長=表面科学の分野で、窒素酸化物を分解する固体触媒反応の機構解明や金属複酸化物の研究などで顕著な成果をあげるとともに、走査トンネル顕微鏡を用いた単分子化学反応の実現などで世界をリードする研究成果をあげるなど、斯界の発展に多大な貢献をした。

 ◇小溝祐一(67歳)大阪大学名誉教授=溶接・接合工学の分野で、放射光を利用した溶接時の金属の様子をその場で観察する方法を世界で初めて開発するとともに、この手法を用いた低炭素低合金鋼の溶接部・溶接熱影響部の組織生成挙動や高強度鋼の水素脆化に関する研究を大きく発展させるなど、斯界の発展に多大な貢献をした。

 ◇宮脇敦史(55歳)理化学研究所脳科学総合研究センターチームリーダー=生物物理学、特にバイオイメージングの分野で、蛍光タンパク質を駆使して、生体内で働く細胞や分子を可視化する革新的なバイオイメージング技術を数多く開発し、細胞機能の解明や医薬品開発等の分野における研究を大きく進展させるなど、斯界の発展に多大な貢献をした。

 ◇山谷知行(67歳)東北大学名誉教授=植物栄養学・土壌学の分野で、コメの生育や生産性を規定するイネのアンモニウム態窒素の初期同化機構と老化器官から若い成長中の器官への窒素転流機構を解明することで、植物の窒素代謝の分子メカニズムの理解を大きく発展させるなど、斯界の発展に多大な貢献をした。

 ◇貝渕弘三(62歳)名古屋大学教授=生化学・細胞生物学の分野で、低分子量GTP結合タンパク質Rhoの作用機序や活性制御機構を明らかにし、細胞の収縮、運動、極性形成の制御機構や神経細胞の軸索と極性形成機構を解明するなど、斯界の発展に多大な貢献をした。

 ◇橋田充(65歳)京都大学名誉教授=生物系薬学の分野で、薬物の体内動態を精密に制御することにより治療の最適化を図るドラッグデリバリーシステム(DDS)という医薬品開発の概念および技術体系を構築し、新しい研究領域を確立するなど、斯界の発展に多大な貢献をした。
(29年11月10日号)

新技術振興渡辺記念会創立35周年記念式典・特別講演開催

 新技術振興渡辺記念会(武安義光理事長)は、今年創立35周年を迎えた。これを記念した『創立35周年記念式典・特別講演』が、10月25日、東京千代田区霞が関の東海大学校友会館(霞が関ビル35階)で開催された。
 同記念会は、昭和57年7月に神田通信工業(創設者:故渡辺勝三郎氏)の株式を以て設立された。以来、新技術の振興を図り、社会・経済の発展と福祉の増進に寄与することを目的に科学技術に関し、調査・研究およびこれらの助成・奨励を行ってきた。
 記念式典では、武安理事長が「30年の間には、株式売却などによる資産の形成、新公益人制度による一般財団法人への移行などにより、事業規模もそれに応じて大きく変化してきましたが、今後も財団の目的沿って業務を実施し、役割を果たしていきたい」とあいさつした。
 また、来賓として出席した文部科学省の戸谷一夫事務次官は「日本の将来に渡る成長と繁栄の要は、科学技術イノベーションであり、第5期科学技術基本計画に基づき、予算の確保、知の基盤である学術研究、基礎研究の長期的視野に立った支援、優れた人材の育成等の取り組みを進めていますが、その実現のためにも財団の今後の活動に期待しています」と祝辞を述べた。
 さらに記念式典では、創立35周年記念理事長賞(特別調査研究助成:助成金額500万円)を新潟大学人文社会・教育科学系の佐藤靖教授に『ビックデータ利用の拡大がもたらす政策形成過程の変容』で贈られた。
(29年11月3日号)

お茶の水女子大 室伏きみ子学長インタビュー

 政府は平成16年から国立大学を法人化し、国立大学に対し、自律的な環境の下での活性化や、特色ある研究の実施をはじめとした大学改革を求めている。お茶の水女子大学(東京都文京区)ではこれに対し「時代と社会の要請に応えてグローバルに活躍する女性リーダーを育成する」ことをミッションに掲げ、平成27年に就任した室伏きみ子学長の強力なリーダーシップの下、大学改革が進められている。142年の歴史をもつ同大の現状と目指す姿を室伏学長に聞いた。

グローバルに活躍する女性リーダー育成が使命
(29年11月3日号)

米海底地形調査コンペ 日本から「チーム黒潮」参戦

地球の表面積の7割を占める海洋。しかしながら、陸地と違い海底は約10%しか詳細な測量がなされていない。いまだ知らない世界が海底には広がっている。
 現在、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)で海洋関連研究機関等が参加する「海のジパング計画(次世代海洋資源調査技術)」が実施されているように、海洋国家・日本の強みを活かした研究開発が行われている。その一方で、米国の非営利団体・Xプライズ財団が主催する海中探査のコンペティション「Shell Ocean Discovery XPRIZE」が2015年からスタートしている。石油会社であるロイヤル・ダッチ・シェルがメインスポンサーを務める世界コンペで、AUV(自律型海中ロボット)などを利用して海底地形調査の高速化、低コスト化を目指すものだ。世界中から32チームが参加し、現在は技術審査を通過した20チームが年末からの実海域競技(ラウンド1)に向け、準備を整えている。
(29年10月27日号)

ToMMoとNCGGが互いのバイオバンクを統合

 東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)と国立長寿医療研究センター(NCGG)は、超高齢社会における健康寿命の延伸に向け、互いのバイオバンクを統合して研究を進めるための共同研究契約を締結した。膨大なデータを統合的に解析することで、行き詰まり感が否めない認知症の原因解明研究の加速、画期的な治療薬が開発される可能性がある。
 ToMMoのバイオバンクでは、平成23年度からコホート調査を開始、宮城県と岩手県の地域住民由来の15万人分以上(地域住民コホート約8万人、三世代コホート約7万人)の血液など生体試料・情報を収集している。一方、NCGGのバイオバンクでは平成22年度から、認知症、運動器疾患などの患者由来の疾患コホートの生体試料、診療情報に加え、地域住民コホートの試料、情報を合わせて約2万人分(うち7000人程度が老年病患者)のデータを収集している。
 今回の締結により、互いのバイオバンクのデータから、大規模ゲノムワイド関連解析での老年病感受性遺伝子の同定と解析、疾患発症予測モデルの構築、老年病の原因・関連遺伝子の同定、また、ToMMoのコホートデータから老年病の関連遺伝子や発症予測モデル、重症化モデルを検証する。データバンクの解析結果を統合することで、老年病の新たな予知予防法の開発やドラッグリポジショニング、創薬ターゲット分子の同定・解析を行う。また、地域特性の検証や、関連分野の専門人材の育成などを進めていく。
(29年10月27日号)

文化勲章・功労者決定

 政府は10月24日、酸化チタンの光触媒機能を発見した藤嶋昭東京理科大学学長、遺伝子組み換え技術開発の先駆的役割を果たした松原謙一大阪大学名誉教授ら5氏に文化勲章を授与することを決めた。また、文化功労者として、制御性T細胞を発見し役割を解明した坂口志文大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授ら15氏を選定した。文化勲章の親授式は11月3日、文化の日に皇居で行われる。文化功労者の顕彰式は11月6日にホテルオークラ東京で行われる予定。

酸化チタンの光触媒機能発見 藤嶋氏

 藤嶋昭氏は、酸化チタンの光触媒作用を発見し、以後45年以上、光電気化学による水の光分解、微弱光下の光触媒作用、光機能材料開発などに関して、研究の端緒を開くことから応用に至るまで幅広い業績をあげた。
 昭和40年代前半に酸化チタン電極を用いて行った半導体光電極反応(いわゆる本多・藤嶋効果)が発端となり、世界的に活発な研究が行われてきたが、この研究分野は藤嶋氏が自ら開拓し、基礎から応用に至るまでのあらゆる面で研究の基盤を築いたといっても過言ではない。酸化チタン表面に吸着される分子数と吸収される光子数との関係を定量的に考察するとともに、超親水性という新しい機能を持つことを明らかにし、光触媒反応の特徴が微弱光を用いたときにより顕著に現れるという着想を得て、室内光を利用した、高光活性光触媒薄膜コーティング材料の提案に至った。
 この斬新なアイデアは、学会のみならず産業界からも注目され、現在、抗菌、セルフクリーニング、空気浄化材料、新機能建材などの環境触媒として幅広く実用化されている。また、光化学と電気化学を組み合わせることにより、光と電位にそれぞれ異なる応答を示すLB膜の発見、エレクトロクロミズム反応とフォトクロミズム反応の組み合わせ、ダイアモンド薄膜作製とセンサーへの応用など、数々の新規光電気化学材料を開発し、新しい領域を切り開いた。
 さらにその表面をその場観測する手法により、光界面の基礎的理解を深めた。

遺伝子組み換え技術発展導く 松原氏

 松原謙一氏は、分子生物学の創始期から研究の流れをリードし、特に、今日の生命科学の発展を生み出した2つの大きな流れである遺伝子組み換え技術およびヒトゲノム計画において、先駆的、指導的役割を果たし、今日の生命科学の発展に多大な貢献をした。
 分子生物学曙光の時代の最も重要な研究課題の一つであったDNA複製の分子機構の解明に先駆的に取り組み、λファージを用いてその仕組みを明らかにした。この成果は、遺伝子組み換え技術に不可欠なベクター開発の基礎となり、その後の遺伝子組み換え技術の発展に大きく寄与した。また、自ら遺伝子組み換え技術を成熟させ、ヒトB型肝炎ウイルスゲノムの全塩基配列を決定し、組み換え技術により、大腸菌、酵母、哺乳類細胞株を用いてウイルスタンパク質の生産に成功した。この成果は、B型肝炎ワクチンを安全かつ大量に生産する道を拓き、B型肝炎ワクチンの開発に貢献した。さらに、国際ヒトゲノム計画を遂行するために設立された国際ヒトゲノム機構(HUGO)の初代副会長に就任し、日本はもとより世界におけるヒトゲノム研究の先駆者として、その発展に大きく貢献した。

文化功労者 学術分野は坂口氏ら7氏

 学術研究の各分野で文化功労者に選ばれたのは7氏。

 学術研究の各分野で文化功労者に選ばれたのは6氏。
 北海道大学名誉教授の喜田宏氏は、ウイルス学の分野で、インフルエンザウイルスの自然宿主、存続様式と伝播経路並びに新型ウイルスの出現機構を解明するなど、先駆的な研究業績をあげるとともに、人獣共通感染症の克服に向けた国際共同研究を主導し、斯学並びに予防医学分野の発展に多大な貢献をした。

 大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授の坂口志文氏は、免疫学の分野で、過剰な免疫反応を抑制する自己免疫寛容をつかさどる制御性T細胞を発見し、その発生・機能を細胞・分子レベルで明らかにするとともに、様々な自己免疫病、アレルギー、炎症性腸疾患、ガン免疫、移植免疫における制御性T細胞の役割を解明し、免疫応答制御に関する新たな知見と疾患制御に資する優れた業績をあげ、斯学の発展に多大な貢献をした。

 一橋大学名誉教授の鈴村興太郎氏は、厚生経済学・社会選択理論の分野で、個人的な選好判断から社会的な選好判断が形成される際の民主主義的意思決定の困難さについて、その根拠をより詳細に解明するなどの顕著な研究業績をあげるとともに、国内外の経済学会で主導的な役割を果たすなど学術の振興に多大な貢献をした。

 奈良大学名誉教授の東野治之氏は、日本古代史の分野で、飛鳥・奈良時代を中心に、古代文字史料や古代の対外交流史の研究を主なテーマとして、特に木簡・金石文の解読と分析、遣唐使の外交と文化史的意義・唐文化の受容について、実証性に富む優れた業績をあげた。

 京都大学大学院医学研究科特任教授の成宮周氏は、薬理学・生化学の分野で、炎症、痛み、発熱、止血、血栓形成などを制御しているプロスタグランジンの受容体を同定し、その作用機構を明らかにするとともに、低分子量Gタンパク質Rhoのシグナル伝達経路と生理的意義を解明し、この経路が、細胞の移動、分裂、ガン化などに働くことを見いだすなど卓越した業績を上げ、基礎医学、臨床医学の発展に多大な貢献をした。

 大阪大学名誉教授の村井眞二氏は、有機合成化学の分野で、それまでの常識では不活性で切断できないとされてきた炭素-水素結合を金属触媒を用いることで切断可能であることを示すなど、有機合成経路設計の考え方を一変させ、有機合成手法の革新に貢献した。

 京都大学名誉教授の村松岐夫氏は、行政学・地方自治論の分野で、実証的な分析手法を用いて、戦後日本の政治体制が戦前から続く官僚主導型ではなく、多元的な統治構造を持つものであることや、地方公共団体が中央政府に対して自律的な意思決定を行っていることを解明するなどの業績をあげた。
(29年10月27日号)

「女子中高生の理工系選択促す」応援ネットワーク会議開催

理工系分野を進路選択する女子を増やすための取り組みが進んでいるが、それをさらに活性化するため、理工系女子応援ネットワーク会議が内閣府で開催された。松山政司・科学技術政策・男女共同参画担当大臣は「安倍内閣の掲げる1億総活躍社会に向け、すべての女性が輝く社会、男女共同参画社会はその中核をなすもの。その中で、科学技術分野の女性の活躍、次世代を担う理工系女性人材の育成は日本が持続的に成長するために重要。これからもリコチャレに力を入れたい。この取り組みをすすめる上で、女子中高生本人に加えて、保護者、教員への働きかけ、社会全体で応援する環境づくりが大切。そのためには産学官の協力が不可欠。ネットワークの強化・拡大により、未来の理工系女性の育成が加速することを願っている」と挨拶した。
(29年10月20日号)

JAXAが厚労省女性活躍推進法認定制度の最高評価獲得

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の奥村直樹理事長は10月13日の定例記者会見で、9月28日に厚生労働大臣から女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)の認定を受けたことを発表した。
 「この認定制度は3段階あり、今回、最高位をもらいました。これは愛称を『えるぼし』というもので3つの星がついています。JAXAでは2013年に男女共同参画室を作っています。女性の力を宇宙航空分野に積極的に取り込みたいという考えで、これまで職場環境の改善、職員の意識改革を強力に進めてきました。今回、女性の活躍状況を評価してもらえ、大変喜ばしく思っています。男女共同参画室は、ワークライフ変革推進室と名を変えて、全職員の働き方改革を進めています。そのなかには当然女性の活躍も含まれています。様々な改革を進め、より良い成果を皆様に提供したい」と話した。
 この認定制度は、行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みなど一定の基準を満たした優良な企業が、都道府県労働局へ申請することで、厚生労働大臣から認定を受けられるもの。採用、継続就業、労働時間等の働き方、管理職比率、多様なキャリアコースなどの基準を全て満たすことで最高評価(3つ星)が得られる。
(29年10月20日号)