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コラム・素領域

2024年3月15日号

素領域

グローバル・スタートアップ・キャンパス(GSC)構築に向けて、拠点整備予算は一部措置されているものの、肝心の中身の議論が進まない。米MITなどの拠点をそのまま日本に持ってきて、共同研究を通じてビジネス化しようという、一部のCSTI有識者議員の安易な思いつきが出発点になっているからだ▼米ハーバード大学のWyss研究所では、VCや製薬企業とのアライアンス、篤志家からの寄付など、多様な財源で産学連携のプロジェクトが進められ、多くのスタートアップを生み出している。米国では成功モデルだが、日米を比べると、寄付税制やビジネス関連の法令、さらに研究者や産業界の意識が全く違う▼例えば、ある特許がGSCの共同研究で生まれたと仮定すると、発明者は誰になるのかでまず日米の基準が異なる。米国では緩やかに協力していれば、発明者に名を連ねることができるが、日本では進歩性と貢献度により厳密に評価する。そのため、日米で特許の出願者が異なる事態も想定される。さらに特許を共有化した場合、特許法73条によって第三者への譲渡やライセンス化は日本側だけではコントロールできなくなるため、塩漬けとなったり、体よく盗まれたりするリスクが一気に広がる▼一方、日本でも20年以上、産学連携の仕組みを構築してきた。産学連携本部やTLOの設置に始まり、最近ではスタートアップ・エコシステム拠点都市なども選定した。ただ、圧倒的に資金が足りていない。例えば、国際特許の取得には、1件に約3000万円から1億円程度が必要だが、一般的な政府支援は300万円程度でしかない▼GSC事業だが、成功への道は険しいだろう。

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