学術研究は、自らの興味や関心といった、内側から湧き上がってくるものによって駆動されるため、研究者のパフォーマンスを最大限に発揮できる。一方、近年の基礎研究とイノベーションの近接化により、実用化や社会実装といった、研究者の内在的欲求とは異なる取り組みが求められるようになってきている▼千葉大学と順天堂大学の研究グループが、肺高血圧症の新たな治療標的を同定することに成功した。病勢モニタリング指標や治療薬開発につながるものと期待されている。ただ、モニタリング指標の開発は進んでいるものの、治療薬については、ヒト抗体までできているものの、なかなか進んでいない▼AMEDは日本発の研究成果を社会実装するため、企業導出に力を入れており、1年間で企業導出158件、治験件数111件などの成果をあげている(2025年度実績)。一方、医薬品開発プロジェクトの治験に至った件数は、医師主導治験が37件中27件で、製薬企業からはフェーズ1までの段階が求められている▼今回の研究を主導した千葉大学の免疫発生学は、多田富雄博士、谷口克博士、中山俊憲博士が主宰し、平原潔博士が継いだ、基礎研究を中心とする研究室だ。今回の論文は数年前に投稿し、レフェリーとのやり取りと実験を繰り返し、雑誌の表紙を飾った(故・中山博士も名を連ねる)▼基礎研究者にとって、臨床に役立つ研究は重要だが、自らが臨床研究を主導するのには大きな困難が伴う。もちろん、臨床研究者に協力することはできるが、大学病院は多忙で十分な時間が確保できない。日本の研究力を活かして、患者を救うためには、新たな支援の枠組みを考える必要がある。
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