2026年のノーベル化学賞に東京理科大学の硤合憲三博士が選ばれた。硤合博士の開発した硤合反応は、いわゆる役に立つ化学反応ではない。だが、地球上の生命がなぜ片方のキラリティしか持たないのかといった生命の本質を解き明かすことにつながる可能性がある▼先日、東北大と島津製作所の協働研究所の記者会見の後、島津の山本靖則社長と話した。その中で「大学から共同研究の案件は数多く来るが、アプリケーションばかりで、本質に迫る基礎的研究な研究がほとんどない。今回は基礎に立ち返って共に研究ができるので非常にありがたい」という言葉が非常に印象的だった。基礎研究の重要性が産業界からも求められていることの証左だ▼国立大学法人化以降、運営費交付金や私学助成金は大きく削減された。また、科研費であっても申請書に「社会的意義」の記載が求められるようになった。年々、研究室に配分される経費が削減される中、社会的意義を問われると、安易に応用研究に流されてしまうことは仕方のないことだ▼一方、応用研究も非常に重要である。自らの研究成果を社会の役に立てたいという気持ちを実現しようという姿勢は非常に大切だ。問題は、それが研究者本人がやりたいことか否かである▼以前、財務省の主計官と話したとき、科研費は最もパフォーマンスが高い研究費であることを認めていた。これは科研費が自らの内在的欲求に基づく研究、すなわち学術研究を支援するものだからだ▼iPS細胞の発見から20年。iPS細胞をもとにした再生医療は実用化されつつある。基礎や応用にとらわれるのではなく、学術研究ができる環境を構築することが、次のノーベル賞につながる。
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