人類の知恵を結集させたはずの科学技術は結果として地球温暖化や核兵器などの深刻で大きな脅威をもたらしている▼科学技術の発展は人類に豊かさと幸福をもたらしてきたが、一方ではそうした事態も生み出し、残念ながら、科学技術に対する信頼や期待は失われつつある▼そして今また生成ＡＩをはじめとするＡＩの研究開発や利用の在り方が、にわかにクローズアップされてきている▼この問題を議論した４月末のＧ７群馬高崎デジタル・技術大臣会合では、ＡＩの今後の方向性を閣僚宣言に盛り込んだ▼その内容は、ＯＥＣＤのＡＩ原則に基づき人間中心で信頼できるＡＩを推進し、この技術がもたらす全ての人の利益を最大化するために協力を促進するという方向を再確認したものだ▼また民主主義の価値を損ない、表現の自由を抑圧し、人権の享受を脅かすような誤用・濫用に反対し、政策と規制では、リスクを軽減しながら促進する、リスクベースかつ将来指向の考え方を示した▼しかし、先述したように科学技術への信頼や期待が失われつつある今、本当に「人間中心で信頼できるＡＩ」が実現できるかどうか心配だ▼結局はＡＩも、地球温暖化のように知らぬ間に人類の脅威になってしまうか、核兵器のように大国などが強力なＡＩを保有して、互いに牽制し合う道具になってしまうのではないか▼ロシアのウクライナ侵攻や、中国、北朝鮮の軍拡、それに合わせた日米韓の軍備強化といった状況を考えると、そうした懸念を拭い去ることはできない▼ビジネス競争を急ぐあまり野放図に開発や利用が進めば、人類は同じ過ちをまたもや繰り返すことになる。そう危惧せざるを得ないほど、ＡＩが人類に及ぼす影響は大きくなる可能性がある。