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コラム・素領域

2019年3月1日号

素領域

東京・上野の東京国立博物館(トーハク)は明治5年、湯島聖堂の大成殿で開催された博覧会から始まり、再来年には150周年を迎える、日本で最も長い歴史をもつ博物館だ。日本を中心に、東洋の様々な美術作品、歴史資料、考古遺物などを保存・展示しており、国宝89件、重要文化財643件をはじめ約11万7000点以上の収蔵品がある▼これだけのものを扱っているのだから、保存や修復を担当する部署というのは大規模な組織なのだろうと期待して、バックヤードツアーに参加した。すると驚くことに、保存修復室の職員は3人で、しかも20年前にようやく部署ができたというのだ。韓国の国立中央博物館には約40人ほどの保存修復スタッフがいることを考えると、その規模の小ささがわかるだろう▼トーハクをはじめとする国立の博物館・美術館は、独立行政法人に位置づけられている。毎年、運営費交付金は減額され続け、しかも入館料などの収入を得ると、その分だけ運交金がさらに減らされる。入館者は増えても経営は厳しくなるという悪循環だ。文化庁によると、昨年ようやく自己収入に応じた減額ルールが外されたというが、これまでの財政的なマイナスによって博物館・美術館の経営力は確実に低下している(運交金依存率は約半分)。もちろん各博物館・美術館は経営力強化に向けて、新たな展示方式の導入や入館料の見直しなどの改革にも取り組んでいるが、抜本的な解決には時間がかかりそうだ▼科学や技術は人類の文化の中から生まれてきたが、現在、その間には大きな溝がある。今こそお互いが協力することで、日本の文化を再興する取り組みが必要だ。

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