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コラム・素領域

2019年3月8日号

素領域

先日、すばる望遠鏡の20周年パーティーが国立天文台と地元日系人商工会議所の共催で開かれた。「すばる」が地元に溶け込んでいる証しであるかのようにアットホームな雰囲気だった▼「すばる」が位置するハワイ島は、ホノルルなど日本人が想像するハワイとは異なった、自然が厳しい場所だ。富士山より高い標高4205㍍の神聖な山・マウナケア山頂に「すばる」は設置されている。北半球の全天、南半球の90%の天体を観測できる場所だ。今の時期、山頂は雪が積もり、強風によって極寒の環境になる▼「すばる」の山麓施設があるヒロは、熱帯雨林気候で東京の2倍も雨が降る。日本人移民が作った町と言われ、米国ハワイ州第2の港湾都市だ。店の名前や食べ物等に日本を感じるところはあるが、日本語は通じない。海岸沿いの繁華街の端の大きな緑地(ワイロアリバー州立公園)には昔、新町という日本人街があった。ここはヒロ湾の最も奥まった場所にある。太平洋各地で起きる巨大地震による津波が来る度に街は壊滅的な被害を受けた。その都度、街は再建されたが、1946年と1960年の巨大地震津波を経て、政治的な判断で新町は公園に整備されることとなった▼東日本大震災から間もなく8年を迎えようとしている。日本国内でも、新町のように繰り返し津波の被害を受けそうな場所は災害危険区域として法律で居住が制限されている。住み慣れた場所を離れる気持ちは筆舌に尽くしがたい。しかし遠く離れた場所で、津波と戦い懸命に生きた日本人たちがいたことに感動し勇気づけられた。今日、その子孫はヒロの商業や文化を盛り上げ活躍している。神聖な神の山に望遠鏡を作ることができたことも、これまでの日本人の貢献があったからこそではないかと思った。

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