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毎週金曜日発行

コラム・素領域 2024年

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2024年12月13日号 素領域

魚へんに冬と書く「鮗」は「コノシロ」と読む。ニシン目ニシン科ドロクイ亜科コノシロ属に分類され、成長に伴って、シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロと名前が変わる。出世魚には珍しく成長に伴い価格が下がる。おいしいが小骨が多い。独特の風味があり、酢と相性が良いとか▼開いて塩と酢で締めたコハダをクチナシで黄色に染めた粟と交互に重ねて漬け込んだコハダの粟漬けは、五穀豊穣を願っておせち料理に用いられている▼日本…

2024年12月6日号 素領域

新たな日本学術会議のあり方について、その概要が固まってきた▼特別な法人として設立し、主務大臣は、会員や中期計画の認可に関与しないが、毎年度の事業計画と監事については認可することで、国が財政的な支援を行う。外部評価委員については、会長が任命し主務大臣が認可する。選考助言委員会を設けて、学術会議が定める選考方針について意見を述べる(会員選考そのものにはかかわらない)。会員選考では、分野ごとに投票を行い…

2024年11月29日号 素領域

近年は集中豪雨や台風、ゲリラ豪雨など、激しい雨の発生回数が増えている▼国交省データによれば、時間当たり降水量50㍉を超すような強い雨の年間発生回数が近年は約30年前の1・4倍に増加している▼水災害による年間被害額も平成30年が約1兆40450億円、翌年の令和元年が2兆1500億円と、それ以前の3~4倍にも拡大している▼そうした水害の対策として治水ダムの建設・再生、放水路や遊水地、ため池、雨水貯留施…

2024年11月22日号 素領域

1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、それをさらに6つに分けた季節を表す二十四節気で、「小雪」は今年11月22日~12月6日にあたる。二十四節気は1年の太陽の黄道上の動きを視黄経の15度ごとに24分割して決められている▼「小雪」は冬の寒さが感じられるようになる「立冬」と雪が降り積もる「大雪」の間に位置し、江戸時代の松平頼救(太玄斎)による暦の解説書「こよみ便覧」では、寒くなって雨も雪として降るからと解…

2024年11月15日号 素領域

日本分子生物学会の第47回年会が11月27~29日に福岡で開催される。かつては小さな学会だったものが、今や日本最大の生命科学系学会となり、同じ会員同士でも専門領域の異なる様々な人たちが集まる。こうした巨大な学会だからこそ、研究者同士の自主的な情報交換の場であった原点に立ち返ることが重要だ▼生命科学に限らず、自然科学系では異分野の融合や連携が急速に進んでいる。こうした異分野の界面でこそ、新たなイノベ…

2024年11月8日号 素領域

気象庁の発表(10月28日)によれば、2023年における世界の主要な温室効果ガス濃度はいずれも観測史上最高を更新した▼気象庁が運営する世界気象機関(WMO)温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)による観測データの解析結果である▼主要な温室効果ガスである二酸化炭素は、23年の世界平均濃度が420・0プラスマイナス0・1ppmで、前年より2・3ppm増加した▼同じくメタンは1934プラスマイナス2…

2024年11月1日号 素領域

NPO法人チャリティーサンタは今年も「大変な境遇にいる全国の子どもたちに、サンタクロースが本を届ける」ブックサンタ2024のクラウドファンディング(https://camp-fire.jp/projects/801426/view)を開始した▼全国330の子ども支援団体が協力して10万人の子どもに新品の本を”サンタクロースから”として贈る取り組みで2017年から活動を続けている▼クラウドファンディ…

2024年10月25日号 素領域

先日、日本三景の一つ、松島に泊まることがあったが、例年とは異なり、牡蠣が痩せてしまっていて非常に残念な思いをした。翌日の八戸の市場では、三陸産が痩せている一方で、北海道産はプリッとしてクリーミーな味わいだった。しかし、名産のイカは不漁で市場関係者の顔は明るくなかった▼北極海域での氷の減少は、偏西風を蛇行させ、台風の進路や地球全体の空気の流れを変えてしまっている。さらに海洋大循環にも大きな影響を与え…

2024年10月18日号 素領域

テレビや新聞などで連日のように報道されるイスラエルとパレスチナ・ガザ、ロシアとウクライナの紛争。大勢の一般市民が犠牲になり、街の建物などが破壊された悲惨な姿が放映され、激化している状況が伝わってくる▼自身も含めて、これを誰も止めない、止められないのを悔しい、情けないと思っている人は多いはずだ。なぜ世界が一致協力して紛争を止められないのか。世界の各地で、国や地域の対立が深まっているせいなのか▼6月末…

2024年10月11日号 素領域

9月ごろから各県でドングリの豊凶調査結果が発表されている。クマの被害拡大の一因であるドングリの不作を予測することを目的に例年行われ、群馬県や兵庫県では今年は不作を発表。冬眠前のクマがエサを求めて人里に出没する恐れがあるとして注意を呼びかけている。特に兵庫県は14年ぶりの「大凶作」で、ツキノワグマの出没数が過去5年平均の2~4倍になると予測している▼ドングリはブナ科の果実の俗称で、ドングリという名前…

2024年10月4日号 素領域

東京大学大学院工学研究科の古澤明研究室で研究開発が行われてきた、光の量子コンピューターを実用化するため、東大発ベンチャーOptQC社が発足した。量子コンピューターというと、超伝導回路、原子、電子などを量子的に操作するもので、日本でも理研が実機を開発するなど、社会実装に向けて研究開発が進んでいる。一方、光を使った量子コンピューターは量子操作した光パルスが量子ビットとして使えるため、大規模化が容易だが…

2024年9月27日号 素領域

9月16日の「敬老の日」にちなんで、総務省統計局が「統計からみた我が国の高齢者」をトピックスとしてまとめた▼それによると、今年9月15日現在の65歳以上の高齢者人口推計は3625万人で過去最多、減少する総人口に占める割合も過去最高の29・3%に達した。世界においても人口10万人以上の200の国・地域の中で、日本の高齢者人口の割合は最高である▼日本の65歳から74歳(前期高齢者)が総人口に占める割合…

2024年9月20日号 素領域

第34回イグ・ノーベル賞の授賞式が9月12日に開催され、18年連続で日本人の受賞者が誕生した。今年は武部貴則氏(東京医科歯科大学教授、大阪大学教授)らの研究グループが「ブタなどの動物がお尻を通じて呼吸できることを発見した」ことにより生理学賞を受賞した▼武部氏らは昨年3月にブタを用いた実証に成功。液体酸素パーフルオロカーボンを低酸素血症ブタの腸管に投与する腸換気法が、自己肺機能に依存しない換気効果を…

2024年9月13日号 素領域

日本の基礎科学の研究成果を社会実装する手段の一つとして、医工連携が行われている。素晴らしい成果は出ているものの、欧米と比べると成功確率はそれほど高くないのが現状だ。どうして、日本では医工連携がうまくいかないのだろうか▼超音波診断、いわゆるエコー検査は手軽でリスクも低いことから、健康診断などでも使われているが、微妙な異常を見つけるには熟練の技が必要になる。理研AIP、国立がん研究センター、昭和大学の…

2024年9月6日号 素領域

とにかく今年の夏も暑い。気象庁の発表によれば、今年7月の日本の平均気温は、同月の平均気温基準より2・16度Cも高く、1898年の統計開始以来、最高であったという▼その暑さは8月に入ってからも衰えず、35度C以上の猛暑日が長く続いた。地球温暖化の影響だと考えられるが、これが海面水温の上昇にもつながっている。気象庁の発表などによると、日本近海の今年の海面水温は平年より高い状態が続いている。特に日本の東…

2024年8月30日号 素領域

暑い日が続くが立秋は過ぎ、日が短くなってきた▼警視庁交通局によれば、薄暮時間帯(日の入り時刻の前後1時間)の死亡事故は6月が最も少なく、7月から増加に転じ特に10~12月が最も多く発生する(令和元~5年の統計)。死亡事故は1日の中では日の入り時刻と重なる午後5~7時台に最も多い▼「黄昏時」と呼ばれる薄暮時間帯には自動車と歩行者が衝突する事故の割合が48%と最も高く、昼間(21%、薄暮時間帯を除く)…

2024年8月23日号 素領域

世界における日本の研究者の存在感が薄くなっていることは、トップ10%論文の世界順位にも現れているが、この問題はより多くの課題を内包している▼文部科学省が6月に公表した国際研究交流の概況によると、2022年度の海外派遣研究者数は5万7218人で、コロナ禍前の3分の1程度まで持ち直しているが、そのうち5万3973人が30日以内の短期で、30日以上の中長期は3245人と相変わらず少ない。これは海外で同じ…

2024年8月9日号 素領域

「生成AIを知っている」小学生は23%、保護者は53%で、そのうち「生成AIの利用」に肯定的な保護者は66%で昨年より10ポイント増加した▼また、知っている小学生のうち「利用経験がある」のは70%。教育・生活事業を展開するベネッセコーポレーションが7月に公表した、全国の小学3年生から6年生とその保護者1032組にアンケート調査した結果である▼それによると、前年と比べて認知や利用率では大きな変化はな…

2024年8月2日号 素領域

政府は先月3日、20年ぶりに新紙幣を発行したが、もう実物をご覧になっただろうか? 国民生活センターなどは、新紙幣発行に伴う詐欺行為に注意をよびかけている。「旧紙幣は使えないから新紙幣と交換する」などといって紙幣をだまし取ろうとする事例の発生が予想されるという。日本銀行によれば昭和30年発行の5円札もいまだ有効とのことで、旧紙幣でも当分心配はいらない▼新紙幣ではデザインを変更し、偽造対策とユニバーサ…

2024年7月26日号 素領域

米国が先月、核融合エネルギーに関する国家戦略を策定したことで、日本、イギリス、米国の3カ国における国際競争が本格化することになる。高市早苗科学技術担当大臣は「我が国も国家戦略に基づく取り組みを加速するために、国家戦略の改訂に向けた議論を8月から開始します」と発表。2030年代の発電実証の達成に向けて必要な国の取り組みを含めた工程表の作成、小型化・高度化などの新興技術の活用による研究開発ロードマップ…

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