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素領域

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2025年10月24日号 素領域

キンモクセイは秋に甘い香りを漂わせる橙色の小さな花を数㌢㍍の塊状に咲かせる常緑小高木で、庭の植栽として親しまれている。しかし少し調べてみると親しまれている割に不明なことの多い植物だ▼属名の「Osmanthus(オスマンサス)」はギリシャ語の「osme(香り)」と「anthos(花)」が語源で、和名はギンモクセイの花が白であることから、橙色を金にたとえて名付けられたらしい▼中国原産の雌雄異株で、日本…

2025年10月17日号 素領域

今年は2人の日本人がノーベル賞を受賞した。非常に喜ばしいことだ。しかし、基盤的経費が削減され、それと比較して科研費の伸び率は低く、特定目的のための研究費は増加してきた。さらに大学改革などのための各種競争的資金が雨後の筍のように次々とできては消えていき、申請や評価のために研究者の研究時間は大きく削られており、次のノーベル賞級の成果を生み出すための土壌は脆弱だ▼生理学・医学賞の坂口志文博士、化学賞の北…

2025年10月10日号 素領域

AIの進化は一層加速しており、創造的なコンテンツ作成などができる生成AIから、いまや自ら課題を見つけて解決し意思決定するエージェンティックAIへと進化している▼そうしたAIと、それが与える脅威について先日、IEEEオンラインプレスセミナーでの講演を聴いた。講師は九州大学の櫻井幸一教授である。講演「AIの進化と脅威:人工知能が地政学を変える時代のサイバーセキュリティ」では、実際の事例などをあげて脅威…

2025年10月3日号 素領域

今年のイグ・ノーベル賞授賞式が米国マサチューセッツ州のボストン大学で開催され、10の個人または研究グループが受賞した。同賞は「人を笑わせ、そして考えさせる」研究などに毎年贈られている▼日本で行われた研究は同賞の常連で、今年も「シマウマのようなしま模様を描いたウシが吸血性のサシバエ類に刺されないようにできるかを調べる実験を行った」ことで愛知県農業総合試験場畜産研究部の兒嶋朋貴氏(現在は農研機構畜産研…

2025年9月26日号 素領域

科学技術・イノベーション政策は、国家安全保障政策とどのような距離感で連携すべきなのか▼基本計画専門調査会で、上山隆大・前CSTI議員は、国家安全保障が第7期基本計画の重要な軸になるという考えを示したうえで「ハイリスクマネーである安全保障系の資金をイノベーション政策にどう取り込んでいくのかが、これまでの基本計画のミッシングポイント」と説明した。米国では1990年代に安全保障系の資金がハイリスクな研究…

2025年9月12日号 素領域

デジタル時代の学生(対象は全国の18歳から29歳の学生)に対し読み書きの実態を調査した結果が、9月1日に公表された▼これは、一般社団法人応用脳科学コンソーシアム(CAN)や東大、NTTデータ経営研究所など7機関・企業が共同で実施した、筆記と読書の関係性を科学的に検証する調査だ▼その結果として示された中で気になったのは、大学などの講義内容を手書きや電子機器で記録する人や、本や新聞・雑誌を普段読む人の…

2025年9月5日号 素領域

沖縄本島地域を中心に、海外から侵入したセグロウリミバエの発生が確認され、現在当該地域では植物防疫法に基づく不妊虫の放飼を含む緊急防除が行われている▼セグロウリミバエは成虫の体長が8~9㍉㍍、体色が黒と橙色の昆虫で、昨年3月に沖縄本島北部で確認された。過去2度にわたり沖縄県の調査用誘引トラップで発見されたことがあるが、寄生果実が確認されるなどの国内における発見は今回が初めてだという▼セグロウリミバエ…

2025年8月29日号 素領域

役に立つ研究ではなく、役に立たない研究をやることが研究者にとって素晴らしいことだとか、重要だとか。そんな議論を最近、聞くことがあった▼自然科学の成立過程を見ていくと、古代のアリストテレスらの哲学から始まり、中世ではキリスト教世界における神の意図を理解するための神学を経て、18世紀に現代的な科学が成立した。いくつかの学校ができたことで、その知識が閉じられた世界から、広く社会に流通するようになった▼古…

2025年8月22日号 素領域

再生可能エネルギーの導入が世界中で盛んだが、太陽光発電は発電出力が天気や時間帯によって左右されてしまう。そのため、再生可能エネルギーの導入が進んだ現在では、季節や天候、時間帯により電力の余剰や不足が起きてしまい、火力発電の出力制御などが行われている▼それでも電力が余る状況では再生可能エネルギーの出力制御が必要になっている。そこで、こうした余剰電力を保存して不足時などにうまく利用しようという技術がい…

2025年8月8日号 素領域

国土交通省は8月1日に「令和7年版日本の水資源の現況」を公表した▼地球上には約14億立方㌔㍍の水が存在すると考えられているが、このうち淡水は2・5%程度しかない。そのうえ淡水の多くは南極や北極地域などの氷として存在し、それを除くと0・8%。そこから地下水を除いた、人が利用しやすい淡水は約0・01%(10万立方㌔㍍)しかない▼日本は世界でも降水量が多い国で、その量は世界平均の2倍ではあるが地域により…

2025年8月1日号 素領域

先日、農研機構の大豆ゲノムに関する記者会見の後、圃場ではなく一本ずつ、遺伝情報の異なる交配品種を調べれば、収量の高いものを見つけられるのではないかと思って聞いてみた。答えはノーだった。実はその研究者も世界的種苗会社に同じ質問をしてみたことがあるという▼農作物の収量には様々な要素が関わっている。例えば、さやが弾けやすいとコンバインで収穫するときに豆だけが取り残され、それだけで2割も収量が変わる。また…

2025年7月25日号 素領域

総務省情報通信政策研究所が「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」を公表した(本紙7月11日号掲載)。その中で、テレビ、新聞、インターネット、雑誌の各メディアについて、重要度と信頼度を調べた結果をまとめている▼全年代では、情報源としての重要度1位はテレビ(81・3%)で、次いでインターネット(72・9%)。新聞は46・9%、雑誌は13・4%となった。娯楽としての重要度1…

2025年7月18日号 素領域

消防庁は消防機関、医療機関および都道府県の協力で平成20年から熱中症による救急搬送人員の調査を実施。今年は5月1日~9月30日までが予定されている▼週別推移では6月9日~6月15日は966人だったが、次週の16日~22日は8603人に増加。23日~29日には4千人台まで下がるも、6月30日~7月6日には1万48人に達し、そのうち8人が死亡している。この週の発生場所の内訳をみると住宅が40・8%、道…

2025年7月11日号 素領域

少なくとも2030年までに、ほぼすべての医療機関で電子カルテを導入する。厚生労働省の「医療DX令和ビジョン2030」に掲げられた目標だ。電子カルテが全面導入され、データの標準化、集約化などができれば、患者データや治療データ、その経過などを解析しやすくなり、医療の質向上と医薬品開発などにつながる▼そうした希望のある未来が様々なところで語られる中、日本医師会の松本吉郎会長は政府の健康・医療戦略参与会合…

2025年7月4日号 素領域

日本の通信機械産業の生産状況が心配である。2024年度の国内生産額は3805億円となり、前年より2・7%減少した。15年前の10年度には1兆3384億円、11年度で1兆3416億円もあった。それが、今ではその4分の1近くまで縮小してしまった▼その背景には、携帯電話からスマートフォンへと市場が変わって、日本の携帯電話機生産が減り、海外のスマホ製品が輸入されて日本市場で伸びてきたことがある。そのため、…

2025年6月27日号 素領域

警視庁によれば昨年の水難事故は1535件で前年度と比較して143件増加し、過去10年間で最多となった。死者・行方不明者も816人と前年度から73人増加している。水難事故は昭和50年には4千5百件以上発生していたが、以降減少傾向が続いていた。一方で近年は減少が頭打ちで、ここ数年間は微増している▼発生場所は海が約46%、河川が約35%。行為別では魚とり・釣りが最も多く約23%、次いで作業中約8%となっ…

2025年6月20日号 素領域

化学同人が1951年から発刊してきた月刊「化学」が、通算889号で休刊となった。同号では、第2世代結晶スポンジ法などの化学の最前線をわかりやすく解説しているほか、化学つれづれ草、わかりやすい化学の伝え方、化合物の物語、みんなの元素学などの連載からは、科学的知見だけでなく、先達の経験など、多くのことを学ぶことができる▼インターネットの発展に伴って、論文の電子化が進み、研究者が紙の雑誌を手に取って論文…

2025年6月13日号 素領域

インターネットを利用する時に、何らかの不安を抱いている人が約7割もいるという▼総務省が5月30日に公表した「令和6年通信利用動向調査の結果」では、前年の69・2%から71・8%に増加している。内訳は、「不安を感じる」が27・8%(前年27・5%)、「どちらかと言えば不安を感じる」が44・0%(同41・8%)である▼しかも13歳から19歳で61・9%、20歳から29歳で63・8%などと、ネットに親し…

2025年6月6日号 素領域

コメを常温で保存していると虫がわいてしまうことがある。主にコクゾウムシやノシメマダラメイガなどで、コクゾウムシは赤褐色または黒褐色の3㍉㍍程度の小型の甲虫、ノシメマダラメイガは1㌢㍍程度の蛾だ。いずれもコメに卵を産み付けて食害する▼なかでもコクゾウムシの雌は穀類に穴をあけ卵を産み付けるので急に現れるように見える。15度C前後で発育し、卵から1カ月程度で成虫になる。20~30度Cの条件では2~7カ月…

2025年5月30日号 素領域

メディアやSNSなどから様々な情報を得て、人は行動を決めている。情報の中には間違ったものや大げさに危機感をあおるものがあり、それを信じて科学的根拠に基づかない行動をとることがある。多くの人が理解しているものの、どの程度の影響があるのかを定量的に示すことは難しい▼東京大学の古瀬祐気教授と東北大学の田淵貴大准教授らのグループは、ワクチンに関する誤情報が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種率、死亡率に…

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