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コラム・素領域

2021年9月3日号

素領域

「プラセボ効果」という用語を聞いたことがあると思う。親しくしている医師から「手術をしないでいるガン患者が、市販のビタミンドリンクが効くと思い込み、毎日のように飲用し、元気にしている」という話を最近聞いた。そこでプラセボ効果を思い出したのである▼そもそもこの効果は、「偽薬」つまり本当の薬ではないものを本物だと思って使用した際、本来出るはずのない効果により病が回復したり痛みが和らいだりする現象のことである。これは人間の思い込みの力といってもよいかもしれないが、この力が幸運と結びつく場合がある。そのことは欧米の大学の研究により明らかにされている▼こんな例がある。あるゴルフの会場でプレーヤーの半数に「このボールは幸運をもたらすボールです」と耳打ちし、残りの半数には何も言わなかった。プレー後に実際のカップイン率を調べてみると、耳打ちされた人は10球中平均6・75回であったのに対して、耳打ちされなかった人では4・75回と有意な差がでたのである▼長年、運を科学的、客観的な視点で追究しているアメリカの著名な研究者は「運とは自分の心がけと行動によって向上が可能なものである」と指摘している。運・不運は、日々の生活や仕事の中のちょっとした振る舞いの積み重ねによって形成されているのだろうか。すべての事象は自分が招いているとするならば、日頃から「自分は運が悪い」と思い込んで生活をしている人には神様はほほえんでくれないのかもしれない▼「信じる者は救われる」ともいう。筆者も「絶対に当たるのだ」との思い込みを込めて宝くじを購入してみたい。

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