科学技術の進歩に寄与し
豊かな社会発展に貢献する
唯一の専門紙です。
毎週金曜日発行

TOP > コラム・素領域一覧 > 2017年5月19日号

コラム・素領域

2017年5月19日号

素領域

先日、沖縄県の西普天間住宅地区における国際医療拠点の形成に関する協議会の報告書が公表された。米軍から返還された西普天間住宅地区に琉球大学医学部・附属病院を移転するとともに、国際的な医療拠点として再開発するため、どのような機能を整備するべきかを取りまとめたものだ▼高度医療・研究機能の拡充、地域医療水準の向上、国際研究交流・医療人育成という3つの機能を整備し、バイオ産業の基盤として、創薬開発等を通じて沖縄振興に貢献するとともに、沖縄の公衆衛生、地域医療水準の向上等を通じて「長寿県沖縄」の復活、感染症対策等を通じて、グローバルヘルスに貢献する▼高度医療・研究機能の一つに沖縄バイオインフォメーションバンク(バイオバンク)がある。これまでの沖縄振興施策により電子カルテやオンライン情報システムが整備されており、そうした医療情報と県民のゲノム情報などを組み合わせたバイオバンクを整備する。沖縄には、独特の環境や遺伝的背景による希少疾患など、特徴的な疾病構造を持つ疾患群が存在する。バイオバンクによって、原因遺伝子の同定や治療法の解明ができれば、沖縄の公衆衛生に寄与するだけでなく、希少疾患の原因解明から生まれた治療法を広く一般的な疾患へ展開できる可能性もある。バイオ関連産業の振興にも役立つだろう▼しかし報告書には、バイオバンクの整備・運営主体は記述されていない。東北メディカルメガバンクの例をあげるまでもなく、本格的なバイオバンクを立ち上げるのであれば、数百億円規模の予算が必要になる。また、安定的にサービスを提供する運営主体を構築することができるかが重要だ。成功には内閣府沖縄振興部局だけでなく、文科省、厚労省なども一体的に取り組む必要があるだろう。

  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Mail
THE SCIENCE NEWS
  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • 購読申込
  • メール