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コラム・素領域

2025年4月18日号

素領域

トランプ米政権の歳出削減の波は、研究者の流出にもつながっている。すでに各メディアが報じているように、ネイチャーのアンケート調査で、米国の研究者の1650人中、約1200人が退職することを検討していることが明らかになった▼多くの研究者がヨーロッパやカナダに新しい職を求めているが、残念ながら、「日本を移転先に」と考えている研究者は少ない。こうした動きに対して、関係者の一部は「日本に優秀なアメリカの研究者を呼ぶような取り組みを進める必要がある」と指摘するが、現実的ではない▼様々な要因があるが、最も大きいのが給与などの処遇面だ。日本の大学や研究機関の給与水準は諸外国と比べると低い。東京大学の一般的な教授の年収は1200万円弱であり、コロンビア大学は平均約4000万円、スタンフォード大学は約3800万円と3倍以上で、コミュニティカレッジを含む全大学の平均でも約2000万円となっている。カナダはアメリカよりも大学教員の給与が高いことで有名だ▼もし、アメリカの研究者が日本に来た場合、給与は大幅に下がってしまう。子供が大学に通っていれば、年間300万~700万円程度の授業料を負担することも難しいだろう。日本では家族が仕事を得ることも難しい。そうなると、日本に転職するのではなく、国際共同研究やクロスアポイントメントというかたちで研究を行うのが現実的な選択肢であろう▼日本は世界と比べると治安が良くて食べ物はうまく、長い歴史に基づく文化的資産も多い魅力的な国だ。ただし、国際頭脳循環という点では、圧倒的に不利な処遇をどうするのか、そろそろ本気で考える必要がある。

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