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コラム・素領域

2025年5月16日号

素領域

政府の量子技術イノベーション会議は5月9日、量子技術に係るユースケース検討会議を設置することを決めた。6月にも初会合を開催し、金融、創薬、運輸の分科会を設置して、各業界での社会実装に向けた課題と解決方策について検討する▼量子に関する国家戦略が策定されてから、5年が経過した。量子コンピューターに関する数多くの研究成果が生まれているが、量子技術の社会実装はなかなか進んでいない▼最も社会実装が進んでいるのが、量子アニーラーだ。例えば、数百機の航空機をどのタイミングで、どの経路を飛ばせば、最も燃料費を抑えることができるのかという、組み合わせ最適化問題にその威力を発揮している▼一方、量子コンピューターや量子暗号通信の社会実装はなかなか進まない。例えば、ある銀行が量子暗号通信を導入して、本店・支店間を量子暗号通信で結んだとしても、銀行ネットワークにつながっている他行から情報が漏れたら意味がない。そのため銀行ネットワークそのものを量子暗号通信でつなぐ必要があるが、その範囲などは業界全体で検討する必要がある▼創薬についても似たような問題が今後生じる可能性がある。改正次世代医療基盤法により、仮名加工情報が扱えるようになったが、今後、ゲノム情報なども扱えるようになる可能性がある。安全性確保には量子暗号通信は重要なツールになるが、どの範囲までを量子暗号通信の対象とするのかなどの検討が必要だ▼こうしたことのバックグラウンドとして、科学に基づく確かな技術が必要になる。理論的な安全性と技術的安全性にはギャップが存在しており、それを埋めるためにも基礎科学をおろそかにしてはいけない。

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