再生可能エネルギーの導入が世界中で盛んだが、太陽光発電は発電出力が天気や時間帯によって左右されてしまう。そのため、再生可能エネルギーの導入が進んだ現在では、季節や天候、時間帯により電力の余剰や不足が起きてしまい、火力発電の出力制御などが行われている▼それでも電力が余る状況では再生可能エネルギーの出力制御が必要になっている。そこで、こうした余剰電力を保存して不足時などにうまく利用しようという技術がいま注目されている。それが「長期エネルギー貯蔵(LDES)」と呼ばれる技術である。すでに米国や欧州、中国などでは様々な研究開発が始まっており、日本でも経済産業省などで検討が行われている▼その所管でエネルギーの技術開発に取り組むNEDOが、先日このLDESに関するワークショップをオンライン・対面のハイブリッドで開き、そうした現況などが報告された▼具体的な技術としては、蓄電池や水素吸蔵、熱エネルギー貯蔵、気体の加圧貯蔵など様々な方法が考えられている。中でも興味深いのは、力学的に重力を利用して位置エネルギーとして蓄える技術である。例えば、コンクリートブロックなどを斜面や立坑、建物上部に引き上げて重力貯蔵する方法があるほか、深い井戸を使う方法もある▼アメリカでは、石油などの休止井戸の中で錘(おもり)を上下することで貯蔵利用する技術が検討されていて、利用可能な井戸がアメリカとカナダ内には260万カ所もあるというから驚きである▼NEDOでは、このLDES技術をフロンティア領域に提案。いま技術シーズとしての情報提供依頼(RFI)を広く呼びかけている。公募課題として設定される可能性もあるので、よいアイデアや情報があれば提案したらいい。
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