先日、第5回医療等情報の利活用の推進に関する検討会が開かれた。有効な治療法・医薬品・医療機器等の開発による医療の質の向上、医療資源の最適配分などにつなげるため、患者の医療情報の二次利用に関する基本理念や制度の枠組みなどを検討している▼疫学研究者、患者団体、法律家からヒアリングが行われたが、ある委員が「どうしてマイナンバーカードと医療情報を結びつけてはいけないのか」と質問した。法律家からは、医療情報と個人情報が結びつくことでリスクが増加することや、マイナンバー制度創設の際に適用範囲を限るようにしたことなどを説明した▼マイナンバーのような個人識別番号を導入している国は多い。米国、韓国、デンマーク、シンガポール、エストニアなど。例えば、韓国では生年月日や出身地などで番号を作るため、番号を忘れることはほとんどない。不正利用には厳格な罰則を導入し、高度なセキュリティ対策をしている▼患者が適切な医療を受ける権利は、命に関わるだけに、プライバシー以上に重要なものだ。例えば、救急患者が運ばれてきたとき、患者の過去の医療情報があるか否かで生命を救える確率は変わり、通常の診療でも治療の質は異なってくる。機関を超えて医療情報をやり取りできる基盤構築は必須だといえる▼座長の森田朗東京大学名誉教授は「海外出張したとき、日本以外の国では、マイナンバーと医療情報をひもづけているのに、どうして日本は使わないのかと聞かれて返答に困った」と、抜本的な制度改正の必要性を訴えた。
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