子宮頸がんには、腺がんと扁平上皮がんがある。腺がんは検診で見つかりにくく、早期発見が難しい上、転移も多く、死亡につながるケースが多い。ただし、ワクチンによって子宮頸がんの9割以上を予防できる可能性がある▼HPVワクチンは2013年から定期接種になったが、有害事象の報道が相次ぎ、わずか2カ月で積極的推奨が控えられ、接種率はほぼゼロになった。20年頃から一部自治体で定期接種が再開され、22年4月からキャッチアップ接種が始まった▼その間に様々な論文が発表されたが、代表的なものが、ワクチンを接種した人も接種していない人も同じ割合で様々な症状(報道で取り上げられた有害事象など)が出るという結果を示した名古屋スタディ(18年)と、名古屋スタディのデータを異なる統計手法で再解析して、ワクチン接種と症状との関連があるかもしれないという結論を出した八重・椿論文(19年)だ▼先日、名古屋市立大学の鈴木貞夫教授が、八重・椿論文の取り扱いについて、公開質問状を日本看護科学学会に提出した。論文審査の公正性や編集委員会の独立性の問題、統計的誤りが指摘されたことの隠蔽などを指摘し、回答を求めている▼論文はピアレビュー(専門家同士の評価)によって、審査され掲載されることが基本的作法だ。その意味では、HPVワクチンの効果や副反応に関する論文であれば、国内外を問わず疫学や公衆衛生学のジャーナルに出すべきだ。報道する側も、そうした論文等を根拠にしなければならない。HPVワクチンを接種しなかった子供たちは、今後、数十年の間に子宮頸がんで命を落とす可能性がより高くなる▼思想・信条の自由は憲法で保障されている。しかし、科学は政治的信条などに左右されることがあってはならない。研究の公正性が保たれなければ、科学そのものへの信頼を失ってしまう。
© 2026 THE SCIENCE NEWS