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コラム・素領域

2017年7月14日号

素領域

ATR(国際電気通信基礎技術研究所)を中心とする研究グループが開発したニューロフィードバック技術の精神疾患治療に向けた開発が進んでいる。その一つがAMED-DecNef多精神疾患データベースの構築である▼鬱病、統合失調症、自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、疼痛などの患者および健常者の安静時脳機能画像を昨年度までに1928例収集し、今年度中には約2200例が集まる予定。安静時のfMRI全脳画像を解析することで、画像としての精神疾患のバイオマーカーを見つけ出すのが目的だ。従来型の人工知能では、10万人の脳画像データが必要であったが、DecNefを用いることで、より少ない画像からも特徴量を抽出することができる▼このプロジェクトで肝になるのが画像データである。ATRでは2013年に撮像統一プロトコルを策定し、日本の標準となっている。しかし、9人の学生が12施設を訪問し、自らの安静時の脳画像を撮像するトラベリング・サブジェクト撮像を実施したところ、撮像プロトコルと機種で安静時のデータが分かれてしまった。つまり、ほとんどの疾患の差より、健常者の個人差、施設間の2種類(機械、被験者)の方が大きいことが明らかになった▼一方、ビッグデータの獲得は難しいものの、少数サンプルでも診断につながるアルゴリズムを開発し、自閉症スペクトラム症のバイオマーカーが開発できたほか、自閉症と統合失調症の重なりに関する関係も検証できた▼最近、ディープラーニングにばかり注目が集まっているが、本当に役立つものが何なのか、もう一度見直す必要があるだろう。

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