理研が若手研究者の支援制度を充実させると発表した。スタートアップ経費や研究費、スタッフなど、研究に専念できる環境づくりのための支援とともに、任期なしのポストへのステップアップも可能にしており、今後、優秀な若手が挑戦的な研究に取り組むことで、日本から新たな価値が生まれることが期待される▼理研といえば、任期付き研究者の雇用問題がクローズアップされている。労働契約法改正により、任期付き雇用は5年を上限に任期なし雇用へと転換する権利が発生するため、約5年前、多くの企業で雇い止めが発生した。研究職については、期限が10年に延長され、この3月末には、多くの大学や研究機関で雇い止めが発生すると想定されている▼先日、理研の元理事に話を聞いたところ、労働契約法が改正され、この問題が発生することが想定されたとき、理研内部では常勤化計画が立てられ、その結果、約9割の非常勤職員が昨年度までに常勤職になったという。一方、理研労組は約380人が雇い止めになると主張。その中には、PI(研究代表者)が雇い止めになることに伴って、雇用を失うスタッフも含まれている▼アカデミックポストは諸外国でも非常に狭き門であり、イギリスでは博士号取得者の数%程度しか常勤ポストは得られない。ドイツでは博士号取得後、約10年以内にテニュアポストを獲得できなければ学術研究機関で働くことはできない。日本だけが厳しいということはない▼ただし、大きく違うのは、欧米では博士が社会の中で尊敬される存在であり、企業もその価値を理解し活用している点だ。社会の価値を変えていくことが問題の根本的な解決には必要だ。
© 2024 THE SCIENCE NEWS