2月14日はバレンタインデー。ローマ帝国時代の西暦269年に殉教した司祭に由来し、キリスト教圏では恋人や家族、親友などが愛を祝う日とされている▼日本では大切な人にチョコレートを贈る習慣が定着しているが、これは洋菓子メーカーのメリーチョコレートが1958年に提唱し、広く社会に定着させた功績に対し、2013年に日本記念日協会から記念日文化功労賞(第3号)が贈られている。ちなみに3月14日のホワイトデーは製菓会社の石村萬盛堂が発案。1978年にお返しにマシュマロを贈る日として開始したものが全国に普及し、同じ賞を受賞している(第10号)▼チョコレートはカカオ豆からとれるココアバター(油脂)に砂糖やカカオマス(カカオ豆の胚乳部)などの固体微粒子が分散した構造で、ココアバターのほとんどはステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸で構成されている。チョコレートの特徴はこれら油脂の結晶構造から生み出される。ココアバターの結晶は異なる6タイプに分類される。おいしいチョコレートはⅤ型のみで、この結晶をつくるためにテンパリングという温度操作が用いられる。ブルームが出てしまったチョコレートは安定なⅥ型にあたる▼高エネルギー加速器研究機構などの研究グループはテンパリングの操作で油脂の結晶構造がどのように変化するか放射光を用いて解析。Ⅴ型結晶をつくるには温度に加えてシアストレス(ずり応力)が重要であることを明らかにし、チョコレートの生産効率の向上に貢献した▼時代と共にバレンタインデーは様変わりし、贈り先の半数以上は家族というアンケート結果もある。誰でも楽しめるのは素敵なことだと思う。
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