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コラム・素領域

2023年2月17日号

素領域

これからのAI(人工知能)はどこまで発展し続けるのであろうかと、つい素朴な疑問を抱いてしまう▼AIは今や人間社会の数多くの場面に入り込み、縁を切ろうにも切ることができない存在となっている。例えば、腕時計に時刻表示以外の機能が盛り込まれ、血圧、心拍数、血中酸素濃度などの情報を記憶し、瞬時に健康状態がつかめるうえに、そのデータをためておいてくれる。高血圧で日頃主治医のお世話になっている身にはありがたいことではある▼AIを駆使して病気の予防や治療を図るデジタルヘルス市場が急成長しているという。英国の市場調査会社の試算によると、2021年の世界の市場規模は日本円で約21兆円、これが10年後には5倍の約106兆円にまで成長すると予測している。こうした進歩は、人間の健康に関する身近な問題だけに受け入れやすいのかもしれないが、これに警鐘を鳴らす専門家も少なくない▼膨大なデータを駆使するAIとの付き合い方が問題となるからだ。主治医の話によると、検診で心電図を測る際に、計測からデータの取得、解釈まですべてAIが行い「ここに不整脈があると思うが、医師であるあなたの判断はどうだ」と問いかけてくるそうだ。この場合、人間(医師)が介在しているからまだよいが、このようなことが社会全般に広がると、AIではなく人間が主体の行為であることをいちいち証明する必要性に迫られるかもしれない▼ある著名な映画評論家が映画を観ての感想を求められ「人間が演出・脚本し、演じているのも人間でほっとした」と語ったが、着ぐるみのゴジラ映画で育った者としては、その気持ちはよくわかる。

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