9月8日は国際識字デー。1965年にユネスコによって宣言されたもので、尊厳と人権としての識字の重要性を周知し、識字率向上を目指し制定された▼ユネスコによれば世界は進歩し続けているにも関わらず、2020年時点の世界で少なくとも約7・6億人が識字能力を身につけていない。教育格差から男性より女性の識字率が低い。近年のコロナ禍や世界情勢の変化、気候変動でその問題はより深刻化し、低・中所得の国々では簡単な文章を読み理解することのできない10歳児の割合は19年の57%から22年には70%に増加したと推定されている▼このような背景のもとでユネスコは毎年同日にイベントを開催。今年は「移行期にある世界のための識字率向上:持続可能で平和な社会の基盤の構築」がテーマに設定され、ユネスコ本部ではユネスコ国際識字賞の授賞式を含む会議がハイブリッド開催され、一般の人もオンライン傍聴が可能になっている▼日本の識字率は高いといわれてきたが、1948年に実施された「日本人の読み書き能力調査」以降、70年間以上本格的な調査は行われていない。文部科学省によれば昨年の義務教育就学率は99・96%で、国立国語研究所の研究グループは全国規模の識字率調査を計画しているという▼(公社)日本ユネスコ協会連盟は89年から世界各地の貧困地域で無償で学ぶ機会を提供する「ユネスコ世界寺子屋運動」を展開している。この運動は寄付により運営されていて、書き損じハガキや切手などの寄付も受け付けている。記念日を契機に、こうした身近な国際協力を実践してみるのもいいかもしれない。
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