日本のGDPがドイツに抜かれ、世界第4位に転落した。一方、日経平均株価はバブル期の最高値に迫っている▼実体経済が伴わないにも関わらず、株価が上昇していることについて、多くの専門家が様々な要因分析をしている。世界経済のバランスの中で日本の株式市場に資金が流入していることと、NISAなどの国内政策によって、国内の金融資産が株式市場を活性化させているというのが大方の見方だ▼ドイツは憲法上で連邦政府が地方自治に関与することを制限しているため、大学(ドイツの大学は地方自治体が設置)に政府資金を投入することはできなかったが、1970年に科学・教育・研究への支援を可能にした。さらに2005年には、連邦・州政府による研究・イノベーション協約が制定され、マックスプランクやフラウンホーファー、ヘルムホルツなどの予算を年間3~5%ずつ増加させていった。その結果、20年以上前からドイツはトップ1%、10%、論文数いずれでも日本を上回るようになった(整数カウント)▼その成果がさらに産業競争力やGDPにつながるのに、数年から20年を要したといえる。GDPは円安の影響が大きいという指摘もあるが、円安も国際的な信用度の表れだ▼日本医療研究開発機構(AMED)ができて9年。望むほどの結果が出ないから、新たな組織を作れば良いというのは非常に乱暴な議論だ。政治的パフォーマンスと言っても良いだろう。本気で結果を求めるのであれば、厚労省や経産省の機能の一部をAMEDに移管するといった大胆な改革によって、本当の意味で研究開発から実用化までの一気通貫のシステムを作り、資金を投入し、さらに果実を手にするまでの一定の時間が必要だ。
© 2024 THE SCIENCE NEWS