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コラム・素領域

2024年9月13日号

素領域

日本の基礎科学の研究成果を社会実装する手段の一つとして、医工連携が行われている。素晴らしい成果は出ているものの、欧米と比べると成功確率はそれほど高くないのが現状だ。どうして、日本では医工連携がうまくいかないのだろうか▼超音波診断、いわゆるエコー検査は手軽でリスクも低いことから、健康診断などでも使われているが、微妙な異常を見つけるには熟練の技が必要になる。理研AIP、国立がん研究センター、昭和大学の研究グループが、超音波診断によるスクリーニングを支援するソフトウェアを開発して、厚労省からプログラム医療機器として薬事承認を得た。実際にはIT企業も参加し、医工連携、産学連携で成果を出した▼昭和大学の松岡隆准教授は「医工連携が進まない一つの理由は医師の側が丸投げするからです」と指摘する。その結果、医師が現場で求めるものとは異なるものができてしまうのだという。今回うまくいった要因として「彼ら(企業等)に現場に何度も来てもらって、彼ら自身が読影できるまでになったことで開発がスムーズにいきました。でき上がったものの精度は70~80%程度でした。99%以上でないので使いものにならないと彼らは思っていたようですが、これは確定診断をするものではなく、スクリーニングに使うので現場からすれば十分な性能です」と話す▼かつて日本の家電メーカーは高性能な製品を海外に展開したものの、機能を絞った低価格の海外製品に負けた。医工連携においても、工学系が求めるものと臨床で求められるものとのギャップを埋めることが重要だ。そのためにも臨床研究者の研究時間を確保する必要がある。

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