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コラム・素領域

2024年12月13日号

素領域

魚へんに冬と書く「鮗」は「コノシロ」と読む。ニシン目ニシン科ドロクイ亜科コノシロ属に分類され、成長に伴って、シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロと名前が変わる。出世魚には珍しく成長に伴い価格が下がる。おいしいが小骨が多い。独特の風味があり、酢と相性が良いとか▼開いて塩と酢で締めたコハダをクチナシで黄色に染めた粟と交互に重ねて漬け込んだコハダの粟漬けは、五穀豊穣を願っておせち料理に用いられている▼日本のコノシロ漁獲量は1984年がピークで1282万㌧、以降減少を続け2018年には442万㌧まで落ち込んでいる。主な漁場は東京湾、大阪湾、有明海。佐賀県では漁獲量が1988年には2000㌧を超えていたが減少を続け、2018年には500㌧を下回った。佐賀県有明水産振興センターは産卵期に禁漁を行うことで漁獲高が5倍に増加したことを報告している▼コノシロにとどまらず他の魚種でも適切な資源管理がなされ、ひいては海の多様性の維持が期待される▼バッテラは酢締めのサバの押し寿司だが、もとはコノシロが用いられていたという。現在も営業を続ける寿司店「寿司常」が、明治24年に当時大阪湾で大量に獲れたコノシロを使ってこの調理法を考案。当初はふきんで締めていたが好評で、多数の注文に作製が間に合わなくなり、舟形の寿司型でつくるようになった。それが客からポルトガル語の「bateira(小舟)」とよばれ定着したという▼お正月の準備の際にコハダとかコノシロを気にかけていただければと思う。

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