最大震度7という能登半島地震による大災害で明けた2024年も間もなく終わる▼パリのオリンピック・パラリンピック、衆議院選挙と首相交代、米国次期大統領選挙など、今年も様々な出来事があった▼科学技術の世界では生成AIの開発利用が急速に進んだ。それに伴い、AIの開発利用をめぐる議論が世界中に広がった。一方ではウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナ、北朝鮮、中国などの軍事情勢の動向から、戦争への不安も深まった一年であった▼そうした中、今年のノーベル平和賞に被爆者の立場から核兵器廃絶を訴え続けてきた日本原水爆被害者団体協議会が選ばれた。先週その授賞式がノルウェーのオスロで開催され、同協議会代表委員の田中熙巳さんが演説した▼演説の中で田中さんは「核兵器をなくしていくためにどうしたらいいか、世界中のみなさんで共に話し合い、求めていただきたい」と述べた。そして「核兵器は人類と共存できない、共存させてはならない」と訴えた▼今年のノーベル賞では物理学賞でAI機械学習の基礎発明が、化学賞でタンパク質構造予測AI発明が選ばれた。人工知能が注目された一年にふさわしい立派な受賞と言えよう▼人類を豊かにし、その安心・安全のために科学技術を開発し、それを活用する。それが科学技術の果たす使命である。AIをめぐっては、いま推進か規制かと世界中で議論が活発化している▼やはり核兵器と同じく、人類と共存できないようなAIなら開発や応用を進めてはならないと思う。
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