毎年4月~6月は狂犬病予防注射月間で、日本では狂犬病予防法に基づき、犬の飼い主は犬に予防注射を受けさせることが義務づけられている。生後91日以上の犬を飼い始めたら30日以内、翌年以降は毎年1回、この期間中に受けさせなければならない。あわせて飼い始めは登録の義務もある▼日本国内で狂犬病は撲滅され、人への感染は1956年を最後に発生していないが、世界では清浄国の方が圧倒的に少ない。不法上陸動物や未検疫動物の侵入等からの感染の危険性は否定できない▼輸入症例、つまり狂犬病流行国で感染した犬に咬まれ来日あるいは帰国して発症した症例は57年以降、70年、2006年、20年に国内で確認されている▼この病気は世界中で年間数万人が死亡する人獣共通感染症で、感染動物の唾液に含まれるウイルスで感染。ほとんどの哺乳動物に感染でき、発症前のワクチン接種なしではほぼ100%死亡する▼発症すると発熱、頭痛、全身倦怠感や嘔吐などを経て、昏睡、麻痺により死亡する。液体を飲もうとすると筋肉が痙攣するため水を恐れ、風を恐れるようになることもある。末梢に感染した場合、ウイルスは非常にゆっくり脳に向かうため発症まで数カ月程度を要し、1年以上の潜伏期間を経た例もある▼人から人への感染は確認されていないが、他にも国境を超える感染症は数多くある。昨年の訪日外客数は3600万人を超え過去最多を更新し、政府は30年に6000万人達成を目指す。政府にはこれに伴う感染症対策との両立を期待したい。
© 2025 THE SCIENCE NEWS