コメを常温で保存していると虫がわいてしまうことがある。主にコクゾウムシやノシメマダラメイガなどで、コクゾウムシは赤褐色または黒褐色の3㍉㍍程度の小型の甲虫、ノシメマダラメイガは1㌢㍍程度の蛾だ。いずれもコメに卵を産み付けて食害する▼なかでもコクゾウムシの雌は穀類に穴をあけ卵を産み付けるので急に現れるように見える。15度C前後で発育し、卵から1カ月程度で成虫になる。20~30度Cの条件では2~7カ月生存し、環境が合えば成虫の雌は約4百個も産卵するので大量発生することも。コメ、麦などの貯蔵穀物だけでなく、乾麺も食害するので被害が他の食品に拡大する恐れがある▼発生を防ぐには冷蔵庫の野菜室に保存し、長期保管を避けることだという。ちなみにノシメマダラメイガの幼虫は、ビニールを食い破ることができるのでビニールに密封しただけでは防げない▼熊本大学国際人文社会研究センターの木畑弘己教授らの研究グループは2010年に縄文時代早期(9500年前)の土器からコクゾウムシの圧痕を検出。その後の研究でコクゾウムシはイネと共に縄文時代後期に伝来した外来種ではなく、蓄えたドングリなどを食害する古くから日本列島にいた在来種であることが明らかになった▼最近のコメの高騰について、一部業者の買いだめの影響という報道もあった。一方で野村証券は過去20年にわたり年間10万トンペースで減少していたコメの需要が23年に急に回復した影響を指摘。世界情勢の悪化により輸入小麦価格が高騰したことを受けての変化とみられている▼昔はしばしばこれら害虫の大量発生があったが、近年の冷蔵技術や異物除去技術の進歩であまり目にすることはなくなった。一方で、コクゾウムシはコメのみを食べるわけではなく、根絶するのは困難だと考えられる。高騰や不足があるとついついちょっと多めに買っておこうと思ってしまうが、保存方法にはご注意ください。
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