日本の通信機械産業の生産状況が心配である。2024年度の国内生産額は3805億円となり、前年より2・7%減少した。15年前の10年度には1兆3384億円、11年度で1兆3416億円もあった。それが、今ではその4分の1近くまで縮小してしまった▼その背景には、携帯電話からスマートフォンへと市場が変わって、日本の携帯電話機生産が減り、海外のスマホ製品が輸入されて日本市場で伸びてきたことがある。そのため、国内生産額は縮小していく一方だが、国内の通信機械市場額は輸入の増加により拡大している。国内市場規模(額)は、国内生産額から輸出額を差し引いた額に輸入額を加えて算出している▼データの出所は生産動態統計調査(経産省)と貿易統計(財務省)である。ただし、部品はこれら各種統計で対象品目が異なるため計算に含めていない。端末機器とネットワーク関連機器について算出した通信機械の国内市場額を見ると、輸入拡大の要因は主としてスマホである▼24年度の輸入総額は4兆円超であり、そのうち3兆円近くをスマホが占めている。輸入先は中国やベトナムなどアジア地域で、海外主要メーカーの製品である▼それ以外のネットワーク関連機器(輸入額1兆円程度)でも、アジアからのデータ通信機器輸入が伸びた。輸入額の地域別構成比を見ると、1位はアジアで94・7%と大半を占める▼2位は北米2・0%、3位は欧州1・8%で、その他1・5%である。最近は日本のデジタル赤字(ソフトウェア・サービス)が深刻だと言われるようになった。しかし、国内生産が伸び悩む通信機械産業の将来も懸念される。
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