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コラム・素領域

2018年5月25日号

素領域

新緑の季節がきた。この時期になると人間はだんだん行動的になってくるが、準備不足のままだと思わぬ落とし穴が待っていることがある▼警察庁発表のデータによると、昨年夏期(7月から8月)の日本の山岳遭難発生件数が611件だというのだ。この数自体、多いように思える。実際ここ数年、多少の増減はあるが600件を超えてしまっている。遭難の理由としては、「道に迷ってしまうこと」が約27%とトップで、「転倒」約24%、「滑落」15%と続く。少し意外だったのが「病気によるもの」で滑落と同程度の約14%にも及ぶ▼自分では元気だと思って登っているうちに心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化症による血管疾患に見舞われやすくなるためだ。常に言われていることだが、そこにはやはり油断が見え隠れする。たいした高さの山ではないのだからとハイキング感覚で登ってしまい、取り返しがつかないことになる。後で悔やまないためにも、気圧や気温が平地とは違うことを知っておくべきだ▼蒸し暑い下界から数時間をかけ、しかも低酸素状態の中、アップダウンのある道を歩くだけでも心臓への負担はかなりのものとなる。それに加えて汗をかき、呼吸による水分の問題も加わる。専門の医師も「慢心は禁物です。温度にしても下界に比べて3度C程度違うはずで、寒暖の差が心臓に負担をかけます。厚手の衣服を用意するのは当たり前です。それに脱水には特に気をつけるべきです」と指摘する▼冬山登山のように本格的なものとなれば事前の心構えはおのずと異なるものだが、この時期はどうしても解放感も手伝い、ついつい注意がおろそかになってしまいがちである。富士山をサンダル履きで登ろうとした人は論外にしても、事前にきちんと計画を立て、装備を整えるといった意識を定着させるべきだ。

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