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コラム・素領域

2018年5月18日号

素領域

先日、携帯電話が故障して苦い経験をした。職場では支障なかったが、問題が起きたのは自宅だった▼単身者のため固定電話の回線はひいておらず、インターネットも携帯電話のテザリングを利用していたため、この時点で自前の通信機器による連絡方法が絶たれてしまった。それなのに連絡が必要な用件を思い出したのだ▼PCはあるため、Wi-Fiがつながる環境があれば何とかメール等でやり取りができる。しかし、どこにフリーWi-Fiがあるかも検索できない。仕方なく10分ほど幹線道路を歩いて見つけた公衆電話で連絡して事なきを得た▼東日本大震災が発生した時も公衆電話に助けられた。東北新幹線の車内で大きな揺れを体験し、いつまで経っても電車は動かず、携帯電話もつながらない。ふと、公衆電話がデッキにあったことを思い出し、テレホンカードを購入して、ボタンを押してみた。すぐ会社に電話がつながり、ようやく状況を飲み込めた。そこで聞いた話から実家も津波被害を受けている可能性があることを知り、青い顔をして今度は実家に電話した。幸いにも津波は到達しておらず家人は怪我もしていないと聞きホッと胸をなでおろした▼現在、国内の公衆電話数は16万台程度で2000年の73万台から5分の1近くまで減少しているが、災害のたびにその重要性が指摘されている。公衆電話は防災関係機関などの回線と同様に優先電話の扱いを受けていることから通信制限がなくつながりやすいからだ▼ICT化が進む現代社会で、個人のリスク管理を徹底することも重要であるが、通信の最後の砦である公衆電話は重要インフラとして維持しなければいけない。

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