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コラム・素領域

2018年5月11日号

素領域

研究開発力強化法の改正に向け、与党内では条文の作成作業が大詰めとなっているが、財務省のセクハラ問題や公文書書き換え問題などで国会が揺れる中、改正案の国会提出時期はいまだ決まっていない▼研究開発力強化法が改正されると何が変わるのか。まずJSTだけでなく、NEDOや産総研、農研機構、理研などでも、法人発ベンチャーやベンチャーキャピタルへの出資が可能になるほか、ベンチャー支援の対価として株式や新株予約権の取得・保有も可能になる。また、国立研究開発法人、公立大学法人、国立大学法人の株式等の取得・保有が無条件にできるようになる▼米国の大学はベンチャー支援や投資による株式利益を基金として積み上げ、その運用益等で戦略的な研究開発を行っている。日本の大学は、いわば手足を縛られて国際競争をしてきたが、法改正でようやく対等な立場になることができる▼もう一つのポイントが個別の法改正がなくとも基金を造成することが可能になる点だ。現在、補正予算で研究費が認められたとしても、基金化には、個別の法人設置法を改正しなくてはならない。例えば、内閣府のImPACTはJST設置法を改正して、5年の期限付きで造成された基金で運営されている。今回の法改正がなされれば、AMED、JST、JSPS、NEDO、農研機構については、設置法の法改正なしに基金を造成できるようになる▼ERC(欧州研究評議会)をはじめ、欧米の研究資金の多くは、基金や基金に準じた運用がなされており、研究費を効率よく使用している。これが世界標準であり、逆に科研費以外で基金化が進まない日本の研究の生産性を低下させている一因でもある▼スキャンダルを追及することも必要であろうが、日本の将来のために今何をすべきか。国会の良識を求めたい。

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