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コラム・素領域

2025年10月17日号

素領域

今年は2人の日本人がノーベル賞を受賞した。非常に喜ばしいことだ。しかし、基盤的経費が削減され、それと比較して科研費の伸び率は低く、特定目的のための研究費は増加してきた。さらに大学改革などのための各種競争的資金が雨後の筍のように次々とできては消えていき、申請や評価のために研究者の研究時間は大きく削られており、次のノーベル賞級の成果を生み出すための土壌は脆弱だ▼生理学・医学賞の坂口志文博士、化学賞の北川進博士とも、これが面白いからと、研究者の内在的発想に基づく学術研究を進めてきた。自由に目的を設定できる科研費のような研究費は、最も投資効率が良いというのは、日本だけでなく世界でも常識となっている。一方で、政策目的が明確な研究を進める場合、基礎的なものであれば、広く公募をするのではなく、すでに実施されている自由発想研究を行っている研究者と政策目的をマッチングさせることが最も合理的だ▼ただし、日本の行政システムでは、ほぼ一律で公募が義務付けられており、応募が1件しかないようなものでも公募・審査・採択という手続きをとるため、研究を実施するまでに余分な時間を取られてしまう。こうした悪平等主義は様々なところでみられ、日本の競争力そのもののを阻害している▼ノーベル経済学賞には、イノベーションが経済成長を牽引してきたことを証明した3人が選ばれた。イノベーションを生み出すためには、自由な発想と自由な研究ができる環境が必要だ。そのためには、研究費や研究時間などはもちろんのこと、様々なところに配置されている過去にとらわれたルールを見直し、改善していくことが求められている。

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