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コラム・素領域

2018年3月30日号

素領域

言語の壁をなくす「自動翻訳技術」が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に注目されている。近年のAIを用いた研究開発で翻訳精度が向上し、実用に耐え得る自動翻訳システムの開発が進んでいるためだ▼そうした中、先日、世界の言葉の壁をなくすグローバルコミュニケーション計画を進めている総務省とNICT(情報通信研究機構)が、自動翻訳シンポジウムを都内で開いた▼会場には多くの参加者が集まり、関心の高さをうかがわせた。シンポジウムでは、AIとビッグデータが自動翻訳で重要なことが強調され、ニューラルネットワーク(深層学習)を用いた機械翻訳の実用技術として、NICTが開発した「Voice Tra(ボイストラ)」の一層の翻訳精度向上へ期待が寄せられた▼「ボイストラ」は多言語(31言語)の音声翻訳アプリとして、既にスマホで利用されている。しかし、その翻訳精度をさらに上げるためには、ニューラルネットワークのアルゴリズムの改良だけでなく、翻訳データ量も大きく関係する▼そこで、NICTは「翻訳バンク」を昨年から運用している。翻訳データは、原文とそれを様々な言語に翻訳した訳文の対を集めたもので、これが多いほど高精度の自動翻訳が可能になる。そのため、様々な分野の翻訳データを集めて集積することが重要となる▼シンポジウムでは、NICTの担当者が「翻訳バンク」の取り組みを紹介した。既に50組織からデータ提供があったとしたが、まだまだ足りず、参加者に一層の協力を呼びかけた▼スマホなどを使い、街中で訪日外国人と気楽に会話できたらと思っている人は多いだろう。そういう願いをかなえるためにも、高度な自動翻訳技術の実現に向け、この「翻訳バンク」に多大な協力が寄せられることを期待したい。

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