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コラム・素領域

2017年9月15日号

素領域

JASIS2017では、各社が最先端の分析機器、科学機器を工夫をこらして展示していた。その中で印象に残ったのがS社の細胞培養ラボだ▼シャーレで細胞培養をする際、異物の混入はよくあることだが、多くの研究室ではそれを肉眼で確認し、一つひとつピペットで吸い取るといった作業を行っている。個人の技量に依存する作業で時間もかかるものだが、異物の認識から除去まで自動で行える装置が参考出品されていた。他にもiPS細胞の未分化維持培養/分化培養を半自動で再現性良く行う装置などが展示されていた。手作業から研究者を開放しようというコンセプトだ▼日本の大学や研究機関の多くの研究室では、博士・修士課程学生やポスドクなどが手作業で細胞培養や分取、サンプル作製などを行っている。一方、欧米の研究機関では、若手研究者の教育のために行う場合もあるが、ほとんどの場合はテクニカル部門がそうした作業を担っている。研究者は課題設定や発見をするため、手を動かすのではなく、計画を立て、データを読み解くのが仕事だからだ▼こうした装置を導入すれば、研究者は頭を使うことに専念でき、研究の効率を上げることができる。企業であれば、人件費を装置に置き換えることで収支が合うものの、大学では学生を無料の労働力として使っているため、こうした考え方が適用できない。さらに現在の大学等の財政基盤では難しい▼安倍政権は「人づくり革命」を政権の目標として掲げているが、そのためには、単に「改革」というだけでなく、大規模な財政投資を行い、若者の課題発見・設定能力を育成するための「改革」を進めなければならない。

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