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コラム・素領域

2017年9月1日号

素領域

20世紀の終わり頃から生命科学が進展、特に分子科学がかなり成熟してきた。その原動力となったのがコンピューター技術である▼実際、生命現象を分子レベルあるいは原子レベルで理解し、それをコンピューターでシミュレーションすることが現実味を帯びてきている。分子がわかれば、アミノ酸配列がわかり、アミノ酸配列がわかれば、その分子の三次元構造がつかめるという具合である。ヒトゲノムの全配列から人のタンパク質すべてを生成し、細胞をコンピューター上につくり出すということが夢物語ではない時代に入ってきた▼その恩恵は、薬の開発にも大きな影響を及ぼすという。AI創薬といわれる技術を使うと、今までは製薬会社が何年もの時間と巨額の資金をかけてやっと一つの薬を開発してきたものが、手軽に当たり前のようにできるようになってくるだけに、質的に大きな変化がもたらされる。「コンピューターを使った大学発の創薬」などという昔はとても想像できないことが今まさに実現されようとしているのだ▼専門家も「少数の患者のための薬の開発となると、製薬工業界は抜本的な体制変換をしなくてはいけないでしょう。多品目をつくらなくてはなりませんから。それは社会問題として出てくるのではないか」と指摘する。一方で「大学で創薬する場合には、研究の始めから終わりまでのきちんとした設計が重要となります」とも▼AI創薬の担い手は、製薬会社ばかりではない。大学もその大きな役割を果たすことになりそうだ。

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