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コラム・素領域

2020年10月23日号

素領域

日本学術会議の新会員任命問題によって、研究者コミュニティが大きく揺れている。6人が任命されなかったことに対して反発が大きいのももちろんだが、その後、学術会議のあり方についても見直しを行うと自民党と政府が決めたことで、現場は戦々恐々としている▼そもそもアカデミーというものは、政府からは独立した存在だが、日本には特殊な歴史的経緯があって、現在のような政府組織の一部という位置づけになった。一方、諸外国では政府予算が入っているものの、アカデミーは独立した別組織だ。政府の審議機能の一部をアカデミーに委託することで成り立っているのだが、日本は各省が審議会を設置し、アカデミーに審議を依頼しないためこうしたシステムになっていない▼この問題が各種メディアで報じられる中、明らかに誤った、あるいは誤解を生むような情報が飛び交っている。曰く、10億円も予算があるのに何もしていない、日本の研究を牛耳っているなど▼勧告・答申はほとんどないが、政府が明らかに間違った政策を行わなければ勧告は行えないし、政府から諮問がなければ答申もできない。科研費審査員の推薦も今はやっていない。一方で提言は今年だけでも68件行われ、環境省やスポーツ庁からの審議依頼に対する回答も出している。また10億円の半分以上は事務局の人件費で、会員手当は1日約2万円弱。しかも手当を辞退する会員も多い。地方の会員の旅費が足りないためだ▼多くの会員は、自分の専門知識を活かして、国民のために何らかの貢献をしたいと願っている。にも関わらず、誤解やフェイクニュースをもとに、そのあり方が問われるのだとしたら、政府の見識を問い直さなければならない。行革の観点から議論するのであれば、政府の審議機能のあり方を含めて検討すべきだろう。

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