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コラム・素領域

2021年1月1日号

素領域

謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。読者の皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます▼今年は丑年。学問の神様として知られる菅原道真のお使いは牛で、道真を祀る全国各地の神社境内には横たわる牛の像が置かれている。触ると御利益があるそうだが、新型コロナウイルスの感染防止の観点から今年は対策を講じた上で触ってほしい▼家畜牛の起源は野生種のオーロックスで、家畜化は約1万年前のメソポタミアで初めて行われたと考えられている。家畜化された牛は様々なオーロックスをもとに、途中で別の遺伝子を取り入れながらユーラシア大陸全体に広がっていった。野生種は人の乱獲により1627年に絶滅。ドイツの動物園で1900年代にオーロックスに近い特徴をもった牛を復元しようとする試みが行われ、結果的にヘックキャトルという品種がつくられている▼日本にも在来牛として明治以前に野生化した口之島牛がいる。名古屋大では90年から、愛知県内の附属施設で遺伝資源保護と教育研究を目的に繁殖集団を維持・飼育。残念ながら2013年にこの活動は終了したが、その際に飼育個体は全国の動物園に譲渡された。上野動物園などで今も見ることができる。そのほか鹿児島大が繁殖集団を維持している▼ヨーロッパ品種の遺伝的影響を受けず、その姿形は平安時代の絵巻物に見られる牛の特徴を残している。野生個体は鹿児島県トカラ列島の口之島にいる100頭ほどとのこと。丑年にあやかって大事にしていただきたい。

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